2023 年 56 巻 10 号 p. 369-375
われわれは本邦における原疾患不明の割合が増加している原因を明らかにするため,標準化透析導入率比(standardized incidence ratio:SIR)を原疾患別・都道府県別に算出して検討した.日本透析医学会WADDAシステムで作成した2019年,2020年の資料より原疾患別・都道府県年齢調整期待導入患者数を計算した.この値を分母に,実際の原疾患別・都道府県導入患者数を都道府県導入患者のSIRで除して補正した値を分子として,原疾患別SIRを算出し分布についての検討を行った.その結果,原疾患不明と腎硬化症のSIRには負の相関が,原疾患不明と糖尿病性腎症,慢性糸球体腎炎にはおのおの負の弱い相関があった(おのおの,p<0.01,p<0.05,p<0.05).原疾患不明の多い都道府県では腎硬化症,慢性糸球体腎炎,糖尿病性腎症が少ない傾向があることを念頭に置いて,透析原疾患の診断を行う必要がある.