日本透析療法学会雑誌
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血液透析患者におけるD-penicillamineの薬動力学的検討
杉山 敏山本 富男露木 幹人岡崎 嘉樹
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1988 年 21 巻 9 号 p. 831-836

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抄録
Wilson病を合併する透析患者におけるD-penicilllamine (D-PA) の薬動力学的検討を行った. 非透析日, D-PA 500mg 1回投与により, 投与後4時間でD-PAの血中濃度はピークに達し (2.0μg/ml), 24時間後も血中に検出された (0.9μg/ml). 代謝物では, まずpenicillamine-cysteine disulfide (PC) が最初に血中に出現し, 4時間でピークに達し (31.3μg/ml), 24時間後も血中に残存した (12.0μg/ml). Penicillamine disulfide (PP), S-methyl penicillamine (PSMe) はそれぞれ2, 6時間後より血中に現れ, 24時間後は更に高い濃度で血中に残存していた (3.9, 10.4μg/ml). D-PAとその代謝物は透析可能であった. D-PAの透析クリアランス値は82.0ml/分であり, 4時間の透析により投与したD-PAの10.5%が未変化体のままで透析除去された. 2日間で投与されたD-PA 1000mgのうち, 代謝物も含め57.7%が4時間の透析で除去された. 透析性が良好であったことよりD-PAの蛋白との結合は弱いものと考えられた.
以上の結果より, キレート剤としてD-PAを透析患者に投与する際, 500mgを1回投与し, 投与2時間後より透析を行い, 代謝物除去の目的でD-PA非投与で1-2回透析を行う方法が適当と思われた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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