日本透析療法学会雑誌
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重症疾患を合併した糖尿病性腎不全患者に対するcontinuous equilibration peritoneal dialysis (CEPD) 療法の検討
馬場園 哲也大原 敦子横山 宏樹石井 克枝宇治原 典子高橋 千恵子佐中 孜小林 みどり太田 三紀子渡邊 千恵子平田 幸正
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1989 年 22 巻 8 号 p. 859-864

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抄録
種々の重症疾患の合併のため, 血液透析が困難であった入院中の糖尿病性腎不全患者12例に対し, CAPDシステムを用いた腹膜透析 (continuous equilibration peritoneal dialysis: CEPD) を行い, その臨床経過を観察した. 血液浄化療法としてCEPDの選択を必要とした合併疾患は, 急性心筋梗塞4例, 重症心不全6例, 脳血管障害3例 (脳出血1例, 脳梗塞1例, 出血性梗塞1例), 高度の出血を伴った増殖性網膜症3例, 血液透析中の血圧の低下が著明で継続困難あった症例が2例, および糖尿病性壊疸1例である. CEPD開始時の血中尿素窒素 (BUN) は94.5±34.7mg/dl (mean±SD), 血清クレアチニン (Cr) は7.3±1.8mg/dlであった.
観察期間は17-446日 (平均96日), 安定期における1日当りの腹膜透析液使用量は3-14l (平均7.1l) であり, 血行動態的に不安定な患者や出血性疾患を合併した患者においても, 安全に腎不全のコントロールがえられた. インスリンは腹腔内投与は行わず, 頻回皮下注射あるいは持続静脈内投与とした. 腹膜炎は1例に認めたのみであった. 12例の転帰は, 6例が死亡したが, 5例が急性期を離脱後血液透析へ移行し, 1例は腹膜透析を継続し外来通院中 (CAPD) である.
CEPDは心血管系への負担が少なく, 抗凝固剤が不要であること, また従来の間歇的腹膜透析と比較し操作が簡易であり, closed systemであるため腹膜炎の頻度が少ない, 等の利点を有し, 重症の糖尿病腎不全患者の管理において有用であると考えられた.
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© 社団法人 日本透析医学会
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