日本透析療法学会雑誌
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透析患者に発生した硬膜下血腫の3例
安田 克樹中村 雄二栗本 典昭香川 直樹大城 良雄山田 謙慈藤田 浩史
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1993 年 26 巻 2 号 p. 223-228

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抄録

硬膜下血腫は過去15年間に143名の透析患者中3名 (2.2%) に発生した. 1例は慢性硬膜下血腫であり, その手術後に反対側に亜急性硬膜下血腫を生じ, 再手術を必要とした. さらにその後水頭症を併発し, 脳室-腹腔シャントにて治癒した. 他は慢性硬膜下血腫と急性硬膜下血腫であり, ともに症状は悪化せず, 血腫は自然に吸収された. 透析患者の硬膜下血腫の特徴としては両側に起こり得ることとどの年代にも生じ得ることである. その原因はヘパリン使用による凝固機能の低下や透析による頭蓋内圧の変動が主なものと考えられる. その症状は頑固な頭痛, ボケのような精神障害, 軽い運動麻痺と特異的ではなく, 痴呆や水頭症, Disequilibrium syndromeの症状と類似しており, その鑑別に注意せねばならない. CT-scanはその早期診断, 適切な治療を可能とした. 特にそれを用いて, 経過を観察することにより, 手術を必要とするのか自然に吸収されるのかを的確に区別できた. 外科手術法は穿頭洗浄が簡単で, その予後も良い. その間の透析は出血の恐れのないフサンを用い, 厳重な体重管理を行うべきである.

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