抄録
糖尿病 (DM) 透析患者における胃運動機能を評価し, 胃運動障害が消化器症状の発現, 栄養状態に及ぼす影響について, 非DM透析患者と比較検討した. DM血液透析 (HD) 患者19名, 非DM-HD患者23名, DM腹膜透析 (CAPD) 患者15名, 非DM-CAPD患者22名の4群を対象に, アセトアミノフェン法により胃運動低下例 (D例), 正常例 (N例) に分類し, 消化器症状, 各種栄養指標に関する評価を行った. HD, CAPDを合わせたDM透析患者は, 非DM透析患者に比し有意にD例を多く認めた (65% vs. 36%, p=0.019). 各群別にみると, DM-HD患者の58%, 非DM-HD患者の39%, DM-CAPD患者の73%, 非DM-CAPD患者の32%がD例に該当した. 消化器症状の有無を各群で検討したところ, 非DM透析患者ではHD, CAPDともD, N例にかかわらず症状を認めなかったのに対し, DM透析患者ではHDのD例で18%, CAPDのD例で73%に消化器症状を認め, HDに比しCAPDに症状の出現頻度が高かった (p=0.019). HD患者ではDMの罹患によらずD, N例間でBMI, 血清アルブミン, 筋肉量, PCRに差を認めなかった. 一方CAPD患者において, DM患者のD例は非DM患者のD, N例やDM患者のN例との比較において筋肉量が最も低値であった. 以上より, DM透析患者のうちCAPD患者において, 胃運動障害を伴う場合には, 消化器症状を発現し易く, 食事摂取不足から生ずる栄養障害の一因となり得る可能性が示唆された.