日本透析医学会雑誌
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高血圧を有する血液透析患者におけるbenazepril hydrochlorideの臨床効果と薬物体内動態の検討
村田 敏晃松前 知治小河原 悟兼岡 秀俊内藤 説也
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1997 年 30 巻 8 号 p. 1053-1059

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抄録
高血圧を伴った慢性維持血液透析患者5例に肝・腎排泄の長時間作用型アンジオテンシン転換酵素阻害薬である, benazepril hydrochloride 2.5mg単回投与を透析日および非透析日に行い, 血圧, benazeprilおよび活性代謝物benazeprilatの薬物動態, ダイアライザーの動脈側と静脈側前後での濃度, 透析液中, 尿中の濃度を測定した. 透析日と非透析日のbenazeprilの血漿中濃度曲線下面積 (AUC) はそれぞれ54.8±21.0ng・hr/mlと53.8±21.9ng・hr/ml, 最高血中濃度 (Cmax) はそれぞれ24.4±12.6ng/mlと20.1±7.2ng/ml, 最高血中濃度到達時間 (tmax) はそれぞれ1.4±0.5hrと2.0±1.7hr, benazeprilatのAUCは900.7±419.9ng・hr/mlと1233.1±392.1ng・hr/ml, Cmaxは33.1±18.5ng/mlと41.9±14.3ng/ml, tmaxは7.8±3.8hrと7.0±3.7hrであり, 透析日と非透析日間ではいずれも有意差はなかったが, 健常人と比較した場合, benazeprilatにおいてAUCは大きく, tmaxは延長していた. benazeprilおよびbenazeprilat濃度ともダイアライザーの動脈側と静脈側で有意差はなかったが, 一部の症例では透析液中にbenazeprilとbenazeprilatが検出された. 尿中ではbenazeprilatのみが検出されたが, 累積尿中排泄率は0.4-1.2%と低値であった. benazepril hydrochlorideは高血圧を有する透析患者においても安全で有効な降圧薬であるが, 健常人と比較してAUCが増加していることからすれば, 投与量の減量が必要と考えられる.
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