日本透析医学会雑誌
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維持透析患者の心機能評価に対する左室長軸運動の意義
杉原 清貴藤本 眞一中野 博山田 一本宮 善恢水野 麗子木村 麻子山路 國弘橋本 俊雄土肥 和紘
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1998 年 31 巻 10 号 p. 1335-1342

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抄録

左室心内膜下心筋線維は左室長軸方向に走行しているので, 左室長軸運動の解析は心機能障害を早期に検出しうる可能性がある. そこで著者らは, 維持透析患者の心機能評価に対する左室長軸運動の意義を検討した. 対象は, 慢性糸球体腎炎を基礎疾患とする32例の維持透析患者 (HD群) であり, その平均年齢が52歳, 平均透析期間が103か月であった. 1回透析前に記録した心エコー図所見から, HD群を左室総壁厚 (TLVT) が2.4cm以上の左室肥大群 (LVH群) 10例と, 2.4cm未満の非左室肥大群 (NH群) 22例に区分した. なお, 対照群 (C群) には健常者20例を選んだ. Mモード心エコー図所見から, 心室中隔壁厚と左室後壁厚の和であるTLVT, 左室拡張終期径 (Dd), 左室収縮終期径 (Ds), および左室内径短縮率 (FS) を計測した. パルスドプラ僧帽弁口血流波形から, 急速流入期最大血流速度E, 心房収縮期最大血流速度A, およびE/Aを計測した. さらに左室長軸Mモードから, 総振幅 (TLAM), 急速流入期振幅 (ELAM), 心房収縮期振幅 (ALAM), 最大拡張速度 (max LAM relax), およびELAM/ALAMを計測した. HD群は, C群に比し, 左室肥大あるいは左室拡大を示し, 左室拡張期特性が低下しており, 左室長軸運動も障害されていた. 左室壁厚以外のMモード心エコー図指標とパルスドプラ僧帽弁口血流指標はLVH群とNH群の両群間に差がなかったが, 左室長軸Mモード指標のELAMおよびELAM/ALAMはNH群に比してLVH群で有意に低値を示した. また, ELAM, max LAM relax, およびELAM/ALAMは, 年齢と弱い負相関を示した. 以上より, 左室長軸Mモード法は, 左室拡張障害を早期に検出し得る可能性があり, 維持透析患者での心機能評価に対しても有用な検査手法と考えられる.

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