日本透析医学会雑誌
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選択的腎動脈塞栓術にて治療した血液透析患者の後腹膜腔出血の1例
西村 博昭内田 洋介中目 康彦
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2005 年 38 巻 10 号 p. 1643-1647

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抄録

選択的腎動脈塞栓術にて治療した血液透析患者の後腹膜腔出血の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は59歳男性. 1993年4月14日慢性糸球体腎炎による慢性腎不全のため血液透析導入となった. 1995年6月大動脈弁閉鎖不全症のため大動脈弁置換術施行され, ワーファリン (1mg) 2.5錠内服中であった. その後経過は順調であったが, 2003年7月20日朝突然の右側腹部痛出現し, 近医を受診した. CT検査にて後天性多嚢胞化萎縮腎よりの後腹膜腔出血と診断された. 同日当院に転院となり, 大動脈弁置換術後にて長期のワーファリン休薬を避けるため治療は選択的腎動脈塞栓術を選択した. 術後メシル酸ナファモスタットを使用して安定した血液透析が施行できていたが, 第13病日右側腹部痛再発と血圧低下をきたした. 再び行った腎動脈造影の結果, 原因は初回腎動脈塞栓術時に塞栓されていなかった腎動脈本幹分枝支配領域における後天性多嚢胞化萎縮腎よりの後腹膜腔出血と診断し, 同血管部位で選択的腎動脈塞栓術を施行した. 術後, 良好に経過し, 第31病日後に退院し, 現在も維持透析継続中である. 透析患者に発症した多嚢胞化萎縮腎よりの後腹膜腔出血に対して塞栓術を施行し, 詳細が明らかな本邦報告例は自験例を含め10例で, 2度にわたる腎動脈塞栓術施行報告は自験例のみであった.

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