抄録
[目的] 腹膜透析患者における食塩コントロールの必要性は本邦で広く認識されている. しかし具体的に推奨されている食塩コントロール基準, そしてその準拠する基礎データに関して, 詳細は不明である. そこで, 食塩コントロールに関する国内医学情報を網羅的に検索し, 記載内容を確認した. [方法] 本邦において1981-2005年に発行された, 腹膜透析患者の食事コントロール内容に関する医学情報を, 医学文献データベース (医中誌Web, 和文のみ) およびハンドサーチにて網羅的に収集した. 収集された医学情報74件 (書籍33冊・学会誌論文4編・商業誌論文37編) を解析の対象とした. [結果] 食塩コントロールの重要性を強調する情報が経年的に増加している一方, 具体的な基準を示さない医学情報も少なくないことが確認された. 具体的な基準を示す医学情報では, 日腎ガイドライン (尿量100mLあたり0.5g+除水100mLあたり0.75g/日) を推奨するものが最多であったが, その比率は29.7% (22件) にとどまっていた. さらに, その他の医学情報では推奨内容に大きな差異が認められた. これら具体的基準の医学的根拠はいずれの資料にも確認することができなかった. [結論] PD患者に対する食塩コントロール基準について, コンセンサスは得られていない実態が明らかになった. 本件に関する臨床エビデンス, それに立脚した食塩コントロールの基準策案が急務である.