2017 年 37 巻 2 号 p. 144-151
12誘導心電図における早期再分極所見は,この10数年の間に致死性心室不整脈の危険因子として認識されるようになった.冠攣縮性狭心症(VSA)は,特徴的な機序により発症する狭心症の一つであり,時に致死性心室不整脈を引き起こす.しかしながら,早期再分極所見や,その特徴がVSA患者において致死性心室不整脈と関連するか否かについては知られていない.さらに,早期再分極所見を有する冠攣縮性狭心症患者の長期経過観察や,VSA患者における早期再分極の機序についても知られていない.われわれは,265例の連続VSA症例について解析を行った.21例の心室細動(VF)蘇生後症例が含まれていた.全体で早期再分極は24.2%で認められた.早期再分極所見はVF蘇生例で観察される頻度が高かった(p=0.001).また,早期再分極所見は独立してVF蘇生と関連した.平均観察期間5.5年で早期再分極を有する症例でVFを起こす確率が早期再分極を有さない症例より高かった.また,早期再分極を有する症例のなかで,早期再分極の日差変動を有する症例で経過観察期間中の心室細動イベントが高かった.早期再分極は,VSA患者において致死性不整脈の予測因子となる可能性がある.ここでは,われわれの施設の結果と文献をもとに,VSA患者におけるERの機序および役割についてレビューし,考察する.