2026 年 46 巻 1 号 p. 22-30
61歳女性.2014年に検診でCoved型ST上昇を呈するBrugada心電図を認めて受診した.過去に失神や胸部症状などはなかったが,父が40歳で突然死していたため,電気生理学的検査を実施した.Burst pacingで容易に心室細動(ventricular fibrillation:VF)が誘発され,無症候性Brugada症候群と診断し,一次予防で植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)植込みを行った.不整脈の発生は一切なく経過したが,2022年10月に遠隔モニタリングにて心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)と抗頻拍ペーシング(antitachycardia pacing:ATP)作動を確認した.2023年2月夕食後にテレビを観ていたところ,突然VFが発生してICDショック作動したため受診した.キニジンを400mg/日導入し,以降はVT/VFの出現なく経過している.女性のBrugada症候群は男性の15分の1程度と非常に少なく,VT/VFイベント発生率も低い.しかし,女性症例は症候とイベント発生率の関連が乏しいという報告や,約20%は60歳以上で初回イベントが発生しているという報告もある.無症候性Brugada症候群に対し,一次予防で植込んだICDにより救命できた本症例から,リスクの層別化とICDの適応について再考したい.