抄録
本稿では、著名な森のようちえんの木更津社会館保育園を運営する木更津大正会が、市立吾妻保育園の民営化を受託した事例に注目し、公立民営化で焦点となる<保育の継承>の中で、どのように森のようちえんへの転換を図っているのかを検証した。公立園の保育を原則踏襲する継承期間3年の経過を待たずに保育の見直しが進められているが、保護者や行政からも評価されている背景には、①園長を中心とした職員の勤続による対話、②理事長のリーダーシップ、③保護者への配慮と発信などがある。なお、民営化2年目の吾妻保育園は、社会館保育園のような本格的な森のようちえん化までは至っていない。単なる自然体験とは一線を画す社会館の森のようちえんでは段階を踏んで森に行くが、それが激変を避ける民営化の継承期間と重なったともいえる。ただし、吾妻保育園が外見上は森のようちえんに見えなくても、森のようちえんで重視される保育観は着実に浸透している。