日本環境感染学会誌
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33 巻 , 2 号
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原著
  • 福井 幸子, 吹田 夕起子, 細川 満子, 矢野 久子, 前田 ひとみ
    2018 年 33 巻 2 号 p. 37-46
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    訪問看護における感染対策には診療所の感染対策の取り組みが影響していると推測し,診療所の感染対策の実態を調査した.

    自記式質問紙調査を実施し,X市・Z市の診療所404件中108件(26.7%)から回答を得た.感染症に関する情報の入手機関で多かったのは「県医師会・市医師会」72件で,情報源として多く活用していたのは「国や県からの通達文書」75件であった.感染予防行動では,交差感染を防ぐ項目の実施が高く,職業感染予防の実施は低い傾向があった.「感染対策指針がある」,「感染対策委員会がある」,「併設事業所がある」,「感染症に関する情報を専門書から入手している」と回答した診療所は,感染予防行動実施の総点が高かった(p<0.01).訪問看護指示書を交付した診療所71件中,感染症の情報を訪問看護事業所に提供していたのは60件(84.5%)で,時期は「診察で感染症がわかった時」44件(73.3%),「訪問看護開始時」29件(48.3%)と時期は画一化されていなかった.また,安全装置付き注射器材を使用している診療所の多くが訪問看護事業所にも同様の器材を配給していることや,廃棄物を持ち込む訪問看護師に対して危険な廃棄方法を指示している診療所があること等から,診療所の感染対策は訪問看護の感染対策に影響を与えており,訪問看護の感染対策向上には,診療所の感染対策の充実が必要である.

  • 伊丹 愛子, 桒原 京子, 堀 賢
    2018 年 33 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    近年,温水洗浄便座の汚染が医療関連感染の原因菌を媒介しない衛生的な温水洗浄便座が求められている.最新の温水洗浄便座では,水道水を電気分解して次亜塩素酸水(中性電解水)を生成し,ノズルを洗浄する機能を有している製品がある1,2).本研究では,次亜塩素酸水生成機能付き便座で生成された低濃度中性電解水を用いて,医療関連感染で問題となりやすい緑膿菌に対する,除菌効果を明らかにすることを目的として本研究を実施した.その結果,緑膿菌臨床分離株,環境分離株とも次亜塩素酸濃度0.5 mg/Lで30秒以上,1.0 mg/Lで5秒以上接触させることで,90%以上の株で菌濃度2桁以上の除菌効果が得られた.以上の結果から,中性電解水は,低濃度でも接触時間と作用間隔を最適化すれば,緑膿菌に対して除菌効果があることが示唆された.

短報
報告
  • 伏見 華奈, 土屋 憲, 池ヶ谷 佳寿子, 加瀬澤 友梨, 齋藤 敦子, 更谷 和真, 徳濱 潤一, 原田 晴司, 髙森 康次, 柴田 洋, ...
    2018 年 33 巻 2 号 p. 56-61
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    当院は,院内感染対策の一環として院内全フロアの給水を対象に年4回レジオネラ定期環境調査を行っている.救急センターのある1階フロアの給水からLegionella pneumophila serogroup 5が検出され,滞留水対策を講じたが繰り返し検出された.レジオネラ属菌の定着による系統的な汚染を疑い,救急センターエリア全給水箇所を調査し汚染の原因究明と対策を行った.

    12箇所でL. pneumophila SG 5が検出された.同時測定した水温が7箇所で30℃以上に上昇していた.配管経路が地下の機械室・ボイラー室を経由しており,水温上昇の原因と考えられた.対策として配管経路の改修工事を行い,水温を下げることによりレジオネラによる系統的汚染を制御できた.撤去した給水管の継手は内腔に錆が堆積しており,レジオネラ増殖の温床と考えられた.

    今回,レジオネラ定期環境調査を起点に給水の系統的レジオネラ汚染に対し,迅速な対策をとり,これを終息することができた.当院は,今日まで院内感染によるレジオネラ症の報告はないが,発生した場合患者の不利益となるばかりでなく病院経営への影響が大きい.病院管理者は危機管理の一環として,給水系のレジオネラ属菌の検出状況を日常的に監視し,早期に検出限界以下にするための対策を通じ,レジオネラ症の発生リスクの低減に努める必要があると考える.

  • 片桐 裕貴, 三星 知, 片桐 光, 継田 雅美
    2018 年 33 巻 2 号 p. 62-66
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    新潟県における抗菌薬適正使用の状況について調査するために,2015年6~7月にアンケートを実施し,2007年に行ったアンケート結果と比較した.アンケートは125施設中103施設から回答を得た.新潟県内の薬物治療モニタリング(TDM)実施率は,2007年と2015年を比較して41%から70%と有意に増加し,特に感染対策チームの設置施設で有意な増加を認め,未設置施設では有意な増加を認めなかった.さらに多変量解析の結果,TDM実施に関連する因子として,バンコマイシンは認定薬剤師と感染管理認定看護師の在籍,テイコプラニンとアルベカシンは認定薬剤師の在籍に対してそれぞれ正の有意な相関を認めた.以上の結果より,新潟県内では2007年と比較し2015年においてTDMは推進されており,特に認定薬剤師がTDM実施に重要な役割を果たしていること,また感染対策チームや認定看護師との協力やサポートが重要であることが示唆された.

  • 小口 正義, 濵 愛子, 小口 はるみ, 田中 文, 石井 有紀, 柴田 龍一, 宮崎 雄紀, 依田 祐介, 井川 正樹, 藤森 洋子, 蜂 ...
    2018 年 33 巻 2 号 p. 67-74
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    感染症治療において血培陽性は生命予後に影響を与えるため,治療方針の検討は速い対応が求められる.血液培養からMRSAおよびカンジダが検出された当日に,ICTメンバーによる血培陽性ラウンドを実施している.そのためICTメンバーが効率良く要点を絞った血培陽性ラウンドが可能となるように,MRSA・カンジダ血培陽性時のチェックリストを作成し,感染情報や抗菌薬の選択等について感染管理支援システムに反映させ情報共有している.またラウンド前に多くの時間がかかっていた検査値の変化,抗菌薬の使用歴などの患者基本情報の収集をIT化により簡潔に自動集約させ効率化を図った.「MRSA血症」,「カンジダ血症」チェックリストは「抗MRSA薬使用の手引き」,「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン」の各チェックリストから引用し電子カルテ内に取り込んだ.診断・治療に関する項目,リスク因子等はチェック又は選択式とした.効率化を図ることで,短い時間でラウンドを実施することができ,タイムリーにICTメンバーが集まりやすくなった.ラウンド内容のチェックリスト化は速やかに,もれなくチェック可能となり電子カルテ内にラウンド結果をそのまま表示することで担当医師への伝達,情報共有や必要な対策が早期に実施可能となった.

  • 中西 穂波, 野瀬 大補
    2018 年 33 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    災害医療は大量動員を必要とする.また被災者の対応は災害ボランティアの協力が不可欠である.今回我々は2016年に発生した熊本地震により稼働困難となった医療機関の入院患者111名を,本震発生当日に受け入れ災害ボランティア250名を動員した.多数の災害ボランティア(以下,ボランティア)の臨床現場への介入は,感染の持込み,拡大,さらにボランティア自身の感染が懸念され,受け入れ側の組織的体制も問われる.そこで感染発生のリスクアセスメントを行うと同時に,基本的予防概念を基にボランティアの行動を意識した配置や啓発など必然的に感染対策ができる環境作りを行った.また被災患者の症候群サーベイランスにより早期の症状察知,拡大防止システム体制を整えた.

    その結果,ボランティア介入下においても感染を防止することができた.症候群サーベイランスでは搬入時は7件の有症状を認め,以後は2.5±1.4件/日で維持でき,ボランティア介入群と未介入群で比較したところ有意差は認めなかった(p=0.39).また延べ入院患者日数当たりの有症状発生率の比較でも,8.8%と6.9%で有意差は認めず(p=0.61),受入れ側の感染管理体制を整備することにより災害時の医療機関へのボランティア介入は十分に可能であると示唆された.

症例報告
  • 高城 一郎, 荒武 舞, 福田 真弓, 平原 康寿, 佐伯 裕二, 岡山 昭彦
    2018 年 33 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2018/03/25
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー

    生後10ヶ月の乳児が発熱,けいれん,水頭症の増悪を認め当院へ転院となった.入院当日の血液・髄液・胃液・気管内採痰の抗酸菌塗抹は陰性であったが,画像所見から結核性髄膜炎,粟粒結核を疑い隔離し,結核治療を開始した.2日目に付き添っていた母親に小児期に結核治療歴,呼吸器症状があることが判明し,4日目に活動性肺結核と診断された.乳児の確定診断には3週間を要した.結核は疑い段階から感染対策が必要であり,乳児結核では母親などの家族が感染源である可能性が高く,院内に付き添い者としていることで発端者以外の感染源となることが考えられ,早急な対応が必要であることを強く意識させられた.

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