環境感染
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大腸癌手術症例における手術部位感染予防対策の費用効果分析
飯島 佐知子針原 康小西 敏郎谷村 久美福田 敬
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2006 年 21 巻 2 号 p. 103-108

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抄録

手術部位感染 (SSI) サーベイランスを行ってきた病院において, 大腸切除術症例を対象に感染予防対策の費用効果分析を行った.
対象は, サーベイランス導入期の1999年の1月から6月までと安定期の2002年7月から12月までに入退院した大腸切除術症例とし, 診療記録より対象症例の属性や感染の有無等を調査した. 各期間の感染対策について感染管理専門看護師に聞き取り調査を行った. 患者1人あたりの感染対策費および診療報酬を算定した.
感染予防対策で1999年から2002年までに変更された主な項目は, クリニカル・パスにより抗菌薬の種類と投与タイミング, 決められた投与期間を厳守することと, 手術創部に対して生理食塩水による皮下洗浄法を取り入れたことなどであった. 1人あたりの感染対策費は, 1999の13,898円に対して2002年には7,008円に削減され, その差額は, 6,890円であった. 発生群と非発生群の術後の診療報酬の差額は, 1999年で738,000円, 2002年で528,000円であった. 1999年の大腸癌手術症例の発生率は28.6%, 2002年は17.1%であった. 感染予防対策に要する一人あたりの費用は, 導入期よりも安定期が低く費用効果的であると考えられた.

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© 日本環境感染学会
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