2007 年 10 巻 4 号 p. 432-436
症例は68歳,男性。左下肢よリマンホールに落下して左側腹部を叩打し,その翌日に左肋骨骨折と診断されて一旦帰宅した。受傷4日後に咳とともに突然の左側腹部痛を認め,以降,漸次増悪したため,その2日後に救急搬送された。初診時腹部CT検査で脾損傷(日本外傷学会脾損傷分類Ⅲa)と高吸収域を示す腹腔内出血を認め,その翌日には貧血が進行したため脾動脈造影を行った。脾上極に限局する無血管野と脾内分枝の途絶を認めてマイクロコイルによる選択的脾動脈塞栓術を行い,再度脾動脈造影にて脾実質の約半分が濃染されることを確認した。術後,再出血や脾膿瘍,血小板著増などを併発せず,第23病日に軽快退院した。脾動脈塞栓術は遅発性脾破裂に対する治療としても確立されているが,本邦における報告は少なく,塞栓方法も種々である。自験例のように脾損傷の範囲が全体の50%程度で限局している場合,マイクロコイルによる選択的脾動脈塞栓術は再出血や重篤な合併症を併発することなく,有効と考えられた。