日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
回盲部切除後,たこつぼ型心筋症を発症した1例
延原 泰行久保 尚士楊 大鵬滝瀬 博仁
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2007 年 10 巻 4 号 p. 437-442

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抄録

症例は80歳,女性。心疾患の既往はなし。腹痛,嘔吐を主訴に来院し,腸閉塞の診断のもと,イレウス管による保存的治療を開始した。イレウスは軽快したが,腹部CTにおいて,回盲部に腫瘤像を認めたため,2005年春,全身麻酔下にて手術を施行した。術前心電図,心臓超音波検査で異常を認めなかった。手術終了直後に,心電図上V3~V6にST上昇を認め,急性心筋梗塞が疑われた。心臓超音波検査では左室心尖部から体部にかけて広範囲に壁運動の低下と心基部の過収縮を認め,たこつぼ型の超音波像を呈した。特徴的な心臓超音波検査所見およびトロポエンT以外の心筋逸脱酵素の上昇がないことから,たこつぼ型心筋症と診断した。術後経過は良好で,術後28日目には,心電図にて陰性T波のみを認め,心臓超音波検査では左室壁運動も正常化した。たこつぼ型心筋症は各種の外科的処置に関連して発症することがあり,外科医も認知すべき疾患であると考えられた。

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© 2007 日本臨床救急医学会
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