日本臨床救急医学会雑誌
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原著
救急救命士課程学生のコミュニケーション技術向上のためのコーチング実習の情動指数(EQ)による評価
鱸 伸子柳澤 厚生和田 貴子山内 亮子馬場 道夫深澤 政富
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2009 年 12 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

近年,大学生のコミュニケーションカ不足が問題とされている。著者らは,救急救命士をめざす大学生のコミュニケーション能力,およびチームワークを育成するために,コーチングによるコミュニケーションの習得を目的とする実習を行った。その教育学的有用性を調査するため,実習前後に情動知能指数(Emotional Intelligence Quotient,EQ)における3知性・8能力・24素養を測定した。対象は救急救命士課程3年学生66名で,3時間のロールプレイを中心とした基本技術(傾聴,質問,承認,提案)を体得する実習を3ヶ月間で5回実施した。コントロール群は臨床検査技術学科学生43名とした。24素養の分析には,コーチング群,コントロール群はともに,過去3年分のデータを解析した。EQの素養をもとに学生の行動特性を評価した結果,学生自身の心内知性,対人関係知性,状況判断知性を構成する8能力(自己認識力,ストレス共生,気分創出力, 自己表現力,アサーション,対人関係力,対人受容力,共感力)すべてのスコアが上昇した。しかし,これら8能力を構成する24の素養のうち18の素養のスコアの上昇がみられたが,6つの素養は変化がなかった。変化が出なかった6つの素養のうちで特記すべき点は,情的温かさと感情的被影響性である。情緒的感受性と共感的理解が高まったことにより,卒後,消防官として災害現場で活動する際に,傷病者や傷病者の家族の気持ちに共感的に理解を示す能力を高めた。しかし,情的温かさと感情的被影響性は変化を認められなかったことで,共感により左右されず,適切にクールに判断し活動できるようになったと推測される。以上の結果から,救急救命士をめざす学生の行動特性の育成に,コーチング実習の導入は有用な方法であると示唆された。

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© 2009 日本臨床救急医学会
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