日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
Japan Trauma Data Bank(JTDB)データからみた外傷症例におけるドクターヘリ搬送の有用性についての検討
阪本 雄―郎益子 邦洋松本 尚横田 裕行
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2010 年 13 巻 3 号 p. 356-360

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抄録

背景:わが国の外傷診療の整備は欧米と比べ遅れていたが,2004年より本邦における外傷登録制度であるJapan Trauma Data Bank(JTDB)が開始された。このJTDBのデータによって今後,本邦における外傷診療の質の評価がさまざまな方面から報告されると考えられる。また,近年ドクターヘリやドクターカーを用いた病院前の医療活動が徐々に普及しておりその有用性が報告されているが,全国的な評価は少ないのが現状である。対象と方法:JTDBに登録された20,260例中,RTSが0および不明な例を除く14,422例を対象として,病院までの搬送法により救急車,ドクターカー,ドクターヘリ,自家用車,独歩の5群に分け,それぞれの外傷重症度(ISS,RTS,Ps値)および転帰を比較検討した。結果:ISSは救急車症例が15.3 ± 11.9であるのに対して, ドクターカー症例23.6 ± 14.8(p<0.0001),ドクターヘリ症例19.0 ± 12.4(p<0.0001)といずれも有意に高値であり,RTSも救急車症例7.26 ± 1.17に対し,ドクターカー症例6.89 ± 1.49(p<0.0001),ドクターヘリ症例7.12 ± 1.26(p=0.0009)と有意に低かった。Ps値も救急車症例が0.90 ± 0.19であり,ドクターカー0.80 ± 0.29(p<0.0001),ドクターヘリ症例0.87 ± 0.22(p=0.0036)は有意に救命困難な症例であったが,死亡率は救急車10.5%,ドクターカー19.3%,ドクターヘリ12.6%と救急車とドクターヘリの間では有意差を認めなかった。また,有意に重傷例であったドクターカー症例はドクターヘリ症例(p=0.0040)および救急車症例(P<0.0001)と比べ有意に転帰は不良であった。まとめ:ドクターカーやドクターヘリによる搬送症例は有意に重症例が含まれていたが, ドクターヘリ症例と救急車症例では転帰に差を認めず, ドクターヘリ搬送によって転帰を改善しうる可能性が示唆された。

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© 2010 日本臨床救急医学会
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