日本臨床救急医学会雑誌
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臨床経験
遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤の適用外使用の経験
鈴木 卓神應 知道樫見 文枝服部 潤佐藤 千恵片岡 祐一相馬 ―亥
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2012 年 15 巻 4 号 p. 536-540

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抄録

当救命救急センターにおいて,出血性ショック治療目的で第VII因子製剤の緊急避難的な投与が行われた12名の患者の血液凝固検査値の推移と生命予後を,後ろ向きに検討した。投与直前の血液凝固検査値は,プロトロンビン時間(以下PT-INR)では2例が測定限界を超えた延長を示し,活性化部分トロンボプラスチン時間(以下APTT)も6例が200秒以上の測定限界を超える延長を示していた。投与後は早期死亡したため測定できなかった3例を除くと,測定限界を超えた症例はなく,平均値でPT-INRは0.96,APTTが43.6秒と改善傾向を示していた。しかし,生存退院できたのは12例中6例(50%)で,生存例は投与時の収縮期血圧が全例90mmHg以上だったのに対し,死亡例は1例を除き投与時の収縮期血圧が90mmHg未満であった。第VII因子製剤は血液凝固検査値を回復させる作用は強いが,出血性ショックの末期状態に投与した場合に生命予後を改善させる効果は認められなかった。

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© 2012 日本臨床救急医学会
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