日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
インフルエンザ感染後に黄色ブドウ球菌による壊死性気管支炎を発症した1例
飯尾 純一郎高木 大輔鈴木 博関戸 祐子村中 裕之具嶋 泰弘前原 潤一
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2020 年 23 巻 4 号 p. 616-619

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抄録

症例は66歳の男性。発熱,意識障害,呼吸困難を主訴に救急搬送された。インフルエンザAによる重症肺炎,敗血症性ショック,多臓器不全と診断しICU管理となった。以後全身管理を行っていたが,第6病日より呼吸状態と胸部X 線検査で肺炎像が増悪した。原因検索として気管支鏡検査を行った結果,気管支粘膜が広範囲に壊死している所見を認めた。気管支肺胞洗浄液の培養検査で黄色ブドウ球菌が検出され,病理学的検査では好中球浸潤と細菌塊を伴った気管支粘膜の壊死像の所見を得た。以上よりインフルエンザ感染後の黄色ブドウ球菌による壊死性気管支炎と診断した。第16病日には壊死性気管支炎の気管支鏡での所見は改善していたが,多臓器不全の状態は改善せず,第56病日に死亡した。インフルエンザ感染後には壊死性気管支炎により呼吸状態が増悪する可能性を秘めており,早期診断のために気管支鏡検査が診断の一助になる。

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