日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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23 巻, 4 号
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会告
原著
  • 小林 知子, 伊藤 友章, 三浦 太郎, 河島 尚志, 坪井 良治, 大久保 ゆかり, 三島 史朗, 織田 順
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 525-529
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:東京医科大学病院救命救急センターへ搬送された,アナフィラキシー患者を調べ,特徴を検討した。方法:2011年1月〜2017年3月まで,当院救命救急センターへ搬送された192例を対象とした。発生場所,重症度,治療,原因抗原を調べた。結果:アナフィラキシーの搬送数は,全搬送数の1.69%で年々増加している。自宅外での発症が58%を占め,重症度は中等症が76例(39%),重症が103例(54%)であった。被疑物質は,食物アレルギーが74.5%を占めた。皮膚科で原因抗原が確定した25例では抗原として小麦が一番多く,次にアニサキスアレルギー,甲殻類の順であった。考察:本検討では,アナフィラキシー患者は初発例が多い。再発防止のため,原因抗原の同定と指導が大切である。アナフィラキシーに対する他科との連携が大切である。結論:都心部におけるアナフィラキシー発症動向を検討し,食物アレルギーが多いことがわかった。

  • 木村 義成, 山本 啓雅, 林田 純人, 溝端 康光
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 530-538
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:不搬送事案が他の重症・中等症事案の救急活動に与える影響を現場到着時間の遅延から推定することである。方法:平成24年に大阪市内で発生した全救急事案を対象とした。不搬送事案の対応時間帯に遠方の救急隊から出動した重症・中等症事案を抽出した。また,地理的加重回帰分析(GWR)により不搬送事案が重症・中等症事案に与える影響の地域差を求めた。結果:大阪市内では1年間の救急事案の0.51%(1,090件/215,815件),つまり救急事案の約200件に1件は,不搬送事案によって重症・中等症事案の現着遅延が生じている可能性が示された。また,GWRによる分析により不搬送事案が重症・中等症事案の現着遅延に与える影響は市内で地域差があることが示された。考察:不搬送事案をはじめとする救急事案には地域差がある可能性があり,本研究のような地理的な分析が今後の救急医療計画の基礎的な資料となり得る。

  • 中尾 誠宏, 田中 秀治, 曽根 悦子, 匂坂 量, 白川 透, 後藤 奏, 吉岡 耕一, 田久 浩志
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 539-545
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:人形モデルを用いた気管挿管を行い,直視型であるマッキントッシュ型喉頭鏡と3種類のビデオ喉頭鏡について比較検討すること。方法:研究の承諾を得た40名の被験者を対象にマッキントッシュ型喉頭鏡と3種類のビデオ喉頭鏡(エアウェイスコープ ® S100・エアウェイスコープ ® S200・McGRATH ® MAC),気管挿管訓練モデルを用いて気管挿管手技を行い,各喉頭鏡について①気管挿管実施時間,②気管挿管の成功率,③気管挿管の合併症(歯牙損傷)の有無を検討した。結果:ブレード挿入から声門視認までの時間はMcGRATH がもっとも短く,ブレード挿入からカフエア注入までの時間ではエアウェイスコープの2種類がマッキントッシュ型喉頭鏡に比べ有意に短かった(p<0.001)。結論:従来から用いられている直視型喉頭鏡と比較して,ビデオ喉頭鏡の有効性が示唆された。

  • ―一人法CPRの有効性についての検討―
    大和田 均, 張替 喜世一, 吉岡 耕一, 中川 雄公, 伊藤 裕介, 大岡 聖門, 原 貴大, 匂坂 量, 田久 浩志, 田中 秀治
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 546-550
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:心肺機能停止傷病者に対するアドレナリン投与などの早期医療介入は,心拍再開率を改善させることが期待されるが,現在のプロトコルは救急隊員3名のうち2人にバッグバルブマスクを用いた心肺蘇生法を行うよう規制している(二人法CPR)。これは特定行為遅延の原因になっている可能性がある。今回,われわれはポケットフェイスマスクを使用した1人の隊員によるCPR(一人法CPR)が,この遅延を短縮できると考えた。方法:一人法と二人法について,①CPRの質(胸骨圧迫の回数,深さ,リコイル率,テンポ,人工呼吸の換気回数,換気量,②傷病者接触から静脈穿刺までに要した時間を比較した。結果:①胸骨圧迫の深さを除き,2つの方法でCPRの質に有意差はなかった。②傷病者接触から静脈路確保までの時間は一人法で32秒〜42秒短縮した。結論:一人法CPRはCPRの質を損なうことなく,静脈穿刺までに要する時間を有意に短縮した。

  • 田中 勤, 玉木 昌幸, 田中 秀之, 渡辺 徹, 村上 宏, 八幡 えり佳, 田中 敏春
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 551-558
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    背景:心肺停止傷病者に対するアドレナリン投与は3〜5分間隔が推奨されているが,実際に病院前での投与間隔について調査検討した報告例は少ない。目的:新潟市の院外心肺停止傷病者に対するアドレナリン1筒目と2筒目の投与間隔が社会復帰に影響するか検討した。方法:新潟市消防局のウツタインデータを用い,2011〜2015年の院外心肺停止傷病者において心原性心停止でかつ病院前で2筒投与された傷病者を対象に初回投与時間の中央値と投与間隔5分未満群と5分以上群とに分け,社会復帰率,心拍再開率,短期生存率を解析した。 結果:対象の院外心肺停止傷病者は134例で5分未満群は37例,5分以上群は97例。社会復帰は各々7例と2例で5分未満群が多かった(p<0.05)。結語:投与間隔が5分未満である症例では社会復帰例が多く,適正な投与間隔でアドレナリン投与を行うことが院外心肺停止傷病者の社会復帰率改善に寄与する可能性がある。

  • 一林 亮, 鈴木 銀河, 山本 咲, 中道 嘉, 渡辺 雅之, 本多 満
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 559-563
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:われわれは気管挿管下に人工呼吸管理を行った80歳以上の高齢者の予後に影響する因子を調査し,人工呼吸管理の是非を検討した。対象および方法:3年間で当院救命救急センターに現場から直接搬送され,気管挿管された80歳以上の患者95例を対象とした。診療録より日常生活動作,認知症の有無,APACHEⅡスコア,アルブミン値,28日間のventilator free day(VFD)などを後方視的に検討した。結果:患者95例のうち生存群55例,死亡群40例であり,多重ロジスティック回帰分析の結果,アルブミン値がオッズ比2.28869 で生存および28日間VFDに影響していた。結論:高齢者治療において人工呼吸管理をする場合,血中アルブミン値も参考に各施設でリスク・予後を評価する必要があると考えられる。

  • 内田 洋平, 高山 稔, 大串 卓也, 中村 篤雄, 高須 修
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 4 号 p. 564-569
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    応急手当普及啓発の推進策として救命入門コース(以下,入門コース)が新設されたが,これまでに知識と技術の維持に関してその効果を調査した研究はなく,再講習の適切な間隔の提示はない。今回,学童期の入門コース受講が,後に応急手当講習を再受講した場合に有益かを受講間隔と併せて検証した。対象は普通救命講習Ⅰを受講した中学1年生(296名)で,小学6年時に入門コース受講歴がある群をA群(95名),小学5年時に入門コース受講歴がある群をB群(72名),受講歴がない群をN群(129名)の3群に分け,各群で心肺蘇生の5項目をスコア化し,比較検討した。A群は他群に対して胸骨圧迫手技の合計点と4項目において評価が高い結果であった(p<0.05)。学童期の入門コース受講は,中学生時の普通救命講習Ⅰの再受講に有益で,さらに小学6年時の受講は知識と技術の維持に効果が高く,1年以内の再講習が適切な間隔である。

調査・報告
  • ―板橋Cityマラソン2019での試み―
    菊川 忠臣, 高梨 利満, 酒本 瑞姫, 國府田 洋明, 茂呂 浩光, 橘田 要一, 小菅 宇之
    原稿種別: 調査・報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 570-578
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    背景と目的:板橋Cityマラソン2019において,救護ボランティアの統括を目的として「LINE」を使用し,①全体の活動状況を迅速に把握すること,②全体に迅速に情報伝達を行うことができるかを検証した。方法:配置場所到着報告用,救護活動報告用,撤収報告用という3つの「LINE」グループを作成し,救護ボランティア全員を登録した。報告内容を統一するため,指定のフォーマットを各「LINE」グループに添付した。上記の報告内容を適宜「LINE」グループを通して報告するよう指示した。結果と考察:「LINE」による通信手段は,報告内容に合わせて専用のグループを作成し,簡潔なフォーマットを用い,取り扱い要領を遵守することで,救護ボランティア全体の活動状況が迅速に把握でき,迅速に情報伝達を行うことができた。「LINE」は救護ボランティアの統括を行うための通信手段として有用であると考える。

  • 当麻 美樹, 切田 学, 岡松 伸一, 河野 誠, 木村 経彦
    原稿種別: 調査・報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 579-588
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    「人生の最終段階の延長線上で生じた心肺停止に際して心肺蘇生を希望しない意思を救急現場で示した傷病者に対して心肺蘇生を行わないこと(病院前DNAR)」に関する地域MC協議会の取り組みを報告する。過去5年間の発生件数は270件,発生場所:自宅/ 高齢者介護・福祉施設=156/105。MC協議会管内の在宅看取り施行医療機関のうち,夜間休日も診療可能であるのは51%,看取りの際に他の医療機関(医師)との相互連携体制があるのは29%にすぎなかった。DNARプロトコールは,日本臨床救急医学会の提言に準じているが,かかりつけ医師と傷病者・家族の間での合意形成後に作成されたDNAR指示書の確認を必須とし,「人生会議の結果」としての位置づけを強調した。医学的,医療倫理上の妥当性を担保するためにもDNAR指示書は必要である。その遂行には,かかりつけ医師や高齢者介護・福祉施設の医療体制の充実が必須である。

  • 岡本 直通, 宮川 一平, 濱田 信亮, 宮川 俊, 椎木 麻姫子, 成田 正男, 石川 成人, 草永 真志, 吉村 玲児, 真弓 俊彦
    原稿種別: 調査・報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 589-593
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:救急外来での自殺リスク評価のためのSAD PERSONSスケールの有用性を評価した。方法:2015〜2018年に産業医科大学病院救急外来を自殺企図で受診した症例を対象とし,主要評価項目はSAD PERSONSスコア合計と精神科入院の関係,副次評価項目はSAD PERSONSスコア各項目と精神科入院の関係とした。結果:対象患者は143症例(女性112例)で,平均年齢42±17歳。47例が精神科医から精神科入院適応と判断された。入院症例のSAD PERSOSスコアは平均4.1±1.4点で,非入院症例3.5±1.6点と比べ有意に高かった(p=0.0095)。副次評価項目は精神病症状,身体疾患の割合が有意に高かった。結論:とくに精神病症状,身体疾患などに留意することで同スケールは,救急外来の自殺企図患者における入院適応の一助となる可能性が示唆された。

  • ―ラピッドカー看護師の役割―
    比嘉 徹, 間渕 則文, 高橋 さやか, 鈴木 晴敬, 林 佑磨, 福士 博之, 松本 卓也, 中川 隆
    原稿種別: 調査・報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 594-599
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    三次医療機関から離れた中山間地での当院ラピッドカー(rapid car,以下RC)では,全臨場事案1,035件のうち112件で三次医療機関(救命救急センターと心臓専門施設)への搬送であり,そのうち29件がドクターヘリ協働となっていた。現場での初期診断と安定化治療に必要であった時間は平均16.9分,現場からランデブーヘリポートまでの搬送診療時間は9.8分であった。この間に,診療を行いながら,紙カルテ(複写3枚目が診療情報提供書となっている)を作成してドクターヘリチームに申し送る必要があり,当院のように必ずしも看護師が同乗せず医師1名での出場のあるRCではその記載が十分に行えていない危惧がある。さらに慌ただしい医療環境の中で患者家族のケアの質は保たれているとは考え難く,RCの提供する病院前救急診療でも看護師の同乗・診療支援は必須であると考えられる。

  • 細谷 龍一郎, 一條 真彦, 島 智子, 宮前 玲子, 鎌田 智幸, 日野 斉一
    原稿種別: 調査・報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 600-607
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    緒言:武蔵野赤十字病院では脳卒中疑い患者に対する早期治療を目的として,医療機関や救急隊から直通で脳卒中担当医につなぐ脳卒中ホットライン(SCU HOT)を構築している。当院では救急外来に常駐する薬剤師はいないが,脳卒中病棟の担当薬剤師が対応を行っている。目的:SCU HOT対応における薬剤師の介入効果を検証する。方法:2016年から2019年の3年間にSCU HOTで来院し脳梗塞の診断を受けた患者を対象に,血栓溶解療法開始までの時間(Door-to-rtPA time)について後方視的調査を行った。結果:rtPA療法を行った63件のうち16件に薬剤師が対応していた。Door-to-rtPA timeの薬剤師介入群の中央値は74分,非介入群で89分となり,介入群で有意に減少していた。考察:急性期脳梗塞患者に対し,病棟薬剤師の介入により早期rtPA療法に貢献できることが示唆された。

症例・事例報告
  • 戸澤 一矢, 岩瀬 史明, 内藤 敦, 井上 章
    原稿種別: 症例・事例報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 608-610
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は妊娠37週の20歳代,女性。自宅で陣痛を発症,本人の訴えから陣痛間隔は3分であったが,かかりつけ病院へ搬送する際,発露状態を確認したため自宅での分娩介助を決断した。発露の段階では,破水は認められず卵膜に包まれた状態であった。会陰の保護をする間もなく卵膜に包まれたまま体幹まで娩出されたが,迅速に卵膜を破り対応ができた。救急隊が分娩に遭遇することは多くはなく,今回のような被膜児分娩(幸帽児分娩)に遭遇した場合の対応についても知っておく必要があるので,文献的考察を含め報告する。

  • 鈴木 恵輔, 加藤 晶人, 光本(貝崎) 明日香, 沼澤 聡, 井上 元, 中島 靖浩, 前田 敦雄, 森川 健太郎, 八木 正晴, 土肥 ...
    原稿種別: 症例・事例報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 611-615
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    ジフェンヒドラミンは抗アレルギー薬,風邪薬,睡眠改善薬などとして用いられている。今回,ジフェンヒドラミン4,990mgを内服した急性中毒例に対して血液透析を施行し,血中濃度測定を行った症例を経験した。症例:22歳,女性。意識障害のため当院に搬送され,眼振や痙攣を認めた。現場に落ちていた空包からジフェンヒドラミン中毒を疑い,人工呼吸器管理,血液透析などの集中治療を行った。第4病日には抜管し意識清明となり,本人よりレスタミンUコーワ錠®などを内服したことを聴取した。その後,合併症なく経過し第8病日に自宅退院となった。血中濃度測定を行うと腎排泄だけでなく,効果が乏しいと考えられていた血液透析によってもジフェンヒドラミンが除去されることが示唆された。したがって,重症のジフェンヒドラミン中毒例では血液透析を考慮してもよいかもしれない。

  • 飯尾 純一郎, 高木 大輔, 鈴木 博, 関戸 祐子, 村中 裕之, 具嶋 泰弘, 前原 潤一
    原稿種別: 症例・事例報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 616-619
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    症例は66歳の男性。発熱,意識障害,呼吸困難を主訴に救急搬送された。インフルエンザAによる重症肺炎,敗血症性ショック,多臓器不全と診断しICU管理となった。以後全身管理を行っていたが,第6病日より呼吸状態と胸部X 線検査で肺炎像が増悪した。原因検索として気管支鏡検査を行った結果,気管支粘膜が広範囲に壊死している所見を認めた。気管支肺胞洗浄液の培養検査で黄色ブドウ球菌が検出され,病理学的検査では好中球浸潤と細菌塊を伴った気管支粘膜の壊死像の所見を得た。以上よりインフルエンザ感染後の黄色ブドウ球菌による壊死性気管支炎と診断した。第16病日には壊死性気管支炎の気管支鏡での所見は改善していたが,多臓器不全の状態は改善せず,第56病日に死亡した。インフルエンザ感染後には壊死性気管支炎により呼吸状態が増悪する可能性を秘めており,早期診断のために気管支鏡検査が診断の一助になる。

  • 一林 亮, 鈴木 銀河, 渡辺 雅之, 山本 咲, 中道 嘉, 中村 聡子, 渕本 雅昭, 本多 満
    原稿種別: 症例・事例報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 620-625
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    はじめに:救急・集中治療の終末期に直面したとき,何が患者・家族にとって最善であるか,対応が難しい場合がある。症例:80歳代,女性。認知症があり,家族が代理意思決定を担っていた。肺炎の診断で入院し第2病日に呼吸状態が悪化,回復の可能性が低いと説明した。家族は気管挿管を希望しICUに入室した。第3病日に状態を受容できるようになり,家族は現行治療の中止,在宅看取り医療を希望した。①家族と多職種で終末期を再確認,②在宅往診医療者と密に連絡,③退院支援看護師が介入し家族の意向を確認,④多職種で患者情報および退院後のリスクを共有,⑤自宅への搬送,手順を家族・医療者間で共有し気管挿管のまま退院し自宅で死亡した。結論:ICUから気管挿管のまま自宅に退院した事例は前例がなかった。救急・集中治療の現場で信頼関係の構築に難渋することもあるが, 頻回に多職種で家族と協議を行い,患者・家族の希望する最後の医療を行った。

  • 松窪 将平, 吉原 秀明
    原稿種別: 症例・事例報告
    2020 年 23 巻 4 号 p. 626-631
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    海上では患者の長距離・長時間の搬送という特殊性を有する。そのため,海上保安庁では,平成17年よりメディカルコントロール(以下MC)協議会を設置・運営し,当院も第十管区海上保安本部と協定を結び,海難救助における救急救命士特定行為の指示を行っている。そのなかにはCPR(cardiopulmonary resuscitation)中止判断基準の指示もある。今回,洋上CPA症例へオンライン指示を通じCPR中止判断基準に基づきCPR中止を指示したところ,上陸先の救急隊が海上保安庁と異なる地域のMCのプロトコールに従ったため,再度CPR再開し搬送,搬送先病院で死亡確認された事例を経験した。海上保安庁のCPR中止判断基準はあまり周知されていない。本プロトコールを病院前救護に携わる機関へ広く周知する必要があるため,本事例の報告を行うとともに海上保安庁のCPR実施判断基準プロトコールの紹介を行う。

資料
  • 北村 浩一, 米川 力
    原稿種別: 資料
    2020 年 23 巻 4 号 p. 632-635
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/08/31
    ジャーナル フリー

    目的:外傷患者出場事案のうちSMRを行う対象に変更があったJPTECガイドライン改訂前後で全身固定の実施状況および現場活動に変化がみられたかを調査し,今後の病院前救急活動について検討する。方法:スクープストレッチャーでの固定を含むバックボードで全身固定またはSMRを実施した外傷患者293症例を対象とし,そのうち固定理由,現場活動時間および病院照会回数をJPTECガイドライン改訂前後で調査した。結果:現場活動平均時間は,改訂前後でそれぞれLoad and Go(L&G)が15分,10分,非L&Gが22分,24分。病院照会平均回数は,改訂前後でそれぞれL&Gが1.05回,1.00回,非L&Gが1.53回,1.74回であった。SMRを行い実際に脊髄損傷があった症例は,改訂前後で4.7%,10.3%。明らかにSMRが必要ない症例は,改訂前後で27%,21%であった。結論:JPTECガイドライン改訂前後とも適応外とされる全身固定が実施されており,現場活動時間短縮と傷病者予後のために救急隊員に対して継続的な教育・訓練が必要である。

編集後記
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