日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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原著
外傷傷病者に対する修正下顎挙上法の検討
―示指法と母指法の比較―
吉川 孝次安田 康晴二宮 伸治山本 弘二友安 陽子坂口 英児
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2021 年 24 巻 1 号 p. 28-32

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抄録

修正下顎挙上法には母指法と示指法がある。JPTECTMガイドブックや救急救命士標準テキストに母指法が記載されているが,JPTECTMプロバイダーコースでは母指法が実施困難であるとの意見がある。修正下顎挙上法の母指法と示指法,どちらの方法が最良か比較検討することを目的に以下の実験を行った。確実性と難易度は救急隊員29名に対し,高機能患者シミュレータを用い,気道確保の成功率と主観的に難易度を評価した。成功率は示指法(96.5±1.4%)と母指法(72.6±23.8%)で,母指法に比べ示指法が有意に高く,主観的な難易度の中央値は,示指法が4.0(4.0-4.5),母指法が2.0(2.0-3.0)で,母指法に比べ示指法が有意に難易度が低かった(p<0.05)。下顎挙上時に加わる下顎角への平均圧力は,示指法(116.8±55.9kPa),母指法(72.5±32.7kPa)で,示指法が母指法に比べ有意に高かった(p<0.05)。示指法は母指法に比べ確実性が高く,難易度が低いのは下顎角への圧力が高かったからと考えられた。よって,修正下顎挙上法は示指法を推奨すべきである。

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