2023 年 26 巻 2 号 p. 106-110
われわれはベプリジルによる薬剤性QT延長症候群から心室細動をきたした2例を経験した。症例1:80歳代,女性。呼吸苦と胸部絞扼感を主訴に救急搬送された。心電図でST低下がみられニトログリセリンが奏功したため,不安定狭心症と診断された。入院後,多形性心室頻拍から心室細動に移行し蘇生された。症例2:80歳代,女性。トイレで失神後,両上肢の痺れと呼吸苦を主訴に救急搬送された。来院時症状は改善し,反射性失神および中心性脊髄損傷と診断された。翌日,意識消失のため救急要請された。救急隊接触時心肺停止(無脈性電気活動)であり,一次救命処置のみで自己心拍が再開したが,その後心室頻拍・心室細動を繰り返した。両症例ともベプリジルを定期処方されており,初診時の心電図でQT延長がみられたため薬剤性QT延長症候群が疑われた。高齢者には多剤を定期処方されている患者が多く,薬歴聴取と薬剤起因性の病態を念頭に置くことが重要である。