目的:病院前心停止傷病者において,アドレナリン投与場所の違いが予後に与える影響を検証する。方法:アドレナリン投与場所が異なる2つの消防本部(A本部:現場,B本部:搬送中)で救急搬送された心停止傷病者1,978例において,自己心拍再開率と社会復帰率を比較した。結果:心室細動/無脈性心室頻拍では,自己心拍再開率が現場44.3%,搬送中35.1%(p=0.294),社会復帰率が現場31.1%,搬送中32.4%(p=1.0)であった。無脈性電気活動/心静止では,自己心拍再開率が現場18.4%,搬送中9.0%(p<0.01),社会復帰率が現場2.0%,搬送中1.0%(p=0.110)であった。考察:無脈性電気活動/心静止では,アドレナリンを現場投与した場合に自己心拍再開率は有意に高く,社会復帰率も高い傾向にあった。一方,心室細動/無脈性心室頻拍では投与場所による差を認めなかった。結語:無脈性電気活動/心静止に対してはアドレナリンの現場投与を優先する必要がある。
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