日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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26 巻, 2 号
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会告
原著
  • ―グリーフカードの活用状況の検証から―
    上村 由似, 高橋 恵, 矢部 紘志, 田村 智, 青木 理美, 片岡 祐一, 浅利 靖
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:来院時心肺停止にて救急外来に搬送され,グリーフカードを配付した患者家族がグリーフカードに記載された相談窓口を認識できていたか,また相談窓口として提示する方法は活用しやすいものであるのかを調査し,死別後支援のあり方を検討することを目的とした。方法:来院時心肺停止にて搬送された患者家族を対象に質問紙調査を実施した。調査項目の記述統計とグリーフカードの活用の有無を2群に分けてχ2検定を実施した。さらに,自由記載を質的分析したミックスメソッドを研究デザインとした。結果:本調査では168名からの回答を得た(回収率24.3%)。8割が患者との死別後に医療者と話す機会を求めており,対面での応対を希望する者が69.6%と多かった。一方で,医療者との連絡を示したグリーフカードは6割で認識されていなかった。結論:患者家族はグリーフカードを配付された認識がなく,活用できていない現状があった。医療者は危機的状況にある患者家族の状況を見極め,死別後支援の方法としてグリーフカードの配付のタイミングや方法を再考していくことが課題である。

  • 今岡 裕一, 田邊 翔太, 森山 尚治, 伊藤 博, 伊藤 篤
    原稿種別: 原著
    2023 年 26 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:病院前心停止傷病者において,アドレナリン投与場所の違いが予後に与える影響を検証する。方法:アドレナリン投与場所が異なる2つの消防本部(A本部:現場,B本部:搬送中)で救急搬送された心停止傷病者1,978例において,自己心拍再開率と社会復帰率を比較した。結果:心室細動/無脈性心室頻拍では,自己心拍再開率が現場44.3%,搬送中35.1%(p=0.294),社会復帰率が現場31.1%,搬送中32.4%(p=1.0)であった。無脈性電気活動/心静止では,自己心拍再開率が現場18.4%,搬送中9.0%(p<0.01),社会復帰率が現場2.0%,搬送中1.0%(p=0.110)であった。考察:無脈性電気活動/心静止では,アドレナリンを現場投与した場合に自己心拍再開率は有意に高く,社会復帰率も高い傾向にあった。一方,心室細動/無脈性心室頻拍では投与場所による差を認めなかった。結語:無脈性電気活動/心静止に対してはアドレナリンの現場投与を優先する必要がある。

調査・報告
  • 岡村 紀子, 谷間 百恵, 田口 大
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:二次救急センターにおいて看護師が実践する終末期に向けた意思決定プロセス支援を明らかにする。方法:A病院救急センターに勤務する看護師経験年数5年以上で初療での経験が3年以上の看護師15名を対象に,インタビューガイドを用いた半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した。結果:意思決定プロセス支援として,「患者の価値観の尊重」・「意思決定支援のアプローチ」・「終末期治療に関する取り決め」・「継続した支援体制への取り組み」の4カテゴリーが抽出された。結論:時間的制約のなかでも患者の価値観の尊重を基盤とし,患者アセスメントとコミュニケーション技法を駆使して意思決定支援のアプローチを行っていた。また,患者のアドボケイトとして終末期治療に関する取り決めを支援し,意思決定後の家族の揺らぎに寄り添っていた。初回介入が継続した支援体制へとつながるよう多職種と情報共有や記録の徹底,社会資源の調整を行っていた。

  • 片桐 江美子, 加藤 京一, 春木 真人, 中曽 圭介, 柏原 聡子, 西田 凌, 松田 寿希, 益田 優希, 谷川原 竜乙
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:診療放射線技師の読影の補助業務に関して,STAT画像報告を行える教育システムを構築する。方法:①アンケートを実施し現在のSTAT画像報告における個人的なレベルの問題点を拾い上げた。②症例別に読影トレーニングを行いその評価を行った。③LINE WORKS®を活用し,放射線科医から読影ポイントやアドバイスを共有した。結果:①結果から腹部領域に関して苦手意識が強いことがわかった。②腹部疾患に関して重点的にトレーニングを行った結果,その症例に関しての読影の補助能力が上がった。③携帯電話を活用することで時間の制約なく,いつでも反復学習ができるようになった。結論:スマートフォンを用いたトレーニングは,誰もが,どこでも,手軽に,繰り返し学習ができ,かつ効率的であり,トレーニングを継続していくことで,個人の読影の補助能力向上に寄与した。

  • 北山 淳一, 早田 修平, 岸 和樹, 福島 純一, 岩崎 安博
    原稿種別: 調査・報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    院内心停止は予後が悪い。そのため心停止前に重症化の予兆を検出し,人的資源や物的医療資源を集中させる院内急変対応システムがrapid response system(以下RRS)である。当院において過去2年間に重症有害事象が発生した患者を調査した結果,異常兆候に気づきながらも連絡を躊躇して時間を要した可能性や,早急に対応できなかった可能性が示唆された。 迅速な連絡と対応を確立するため,修正早期警告スコアという客観的指標で起動し,病棟看護師と同じ職種である救急認定看護師や特定行為看護師が初期対応を行うRRSを導入した。その結果,2年目に予期せぬ心停止患者数が減少した。平日日勤に活動を限局し看護師個人が初期対応を担う当院のRRSは,中規模病院で院内急変対応を導入する際,参考にすべきシステムである。

症例・事例報告
  • 仁村 明日香, 星野 芳史, 木下 秀則
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    われわれはベプリジルによる薬剤性QT延長症候群から心室細動をきたした2例を経験した。症例1:80歳代,女性。呼吸苦と胸部絞扼感を主訴に救急搬送された。心電図でST低下がみられニトログリセリンが奏功したため,不安定狭心症と診断された。入院後,多形性心室頻拍から心室細動に移行し蘇生された。症例2:80歳代,女性。トイレで失神後,両上肢の痺れと呼吸苦を主訴に救急搬送された。来院時症状は改善し,反射性失神および中心性脊髄損傷と診断された。翌日,意識消失のため救急要請された。救急隊接触時心肺停止(無脈性電気活動)であり,一次救命処置のみで自己心拍が再開したが,その後心室頻拍・心室細動を繰り返した。両症例ともベプリジルを定期処方されており,初診時の心電図でQT延長がみられたため薬剤性QT延長症候群が疑われた。高齢者には多剤を定期処方されている患者が多く,薬歴聴取と薬剤起因性の病態を念頭に置くことが重要である。

  • 本田 淳悟, 鈴木 健也, 佐野 秀史, 小川 菜生子, 守屋 まりこ, 沼田 儒志, 大竹 成明, 弦切 純也
    原稿種別: 症例・事例報告
    2023 年 26 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2023/04/30
    公開日: 2023/04/30
    ジャーナル フリー

    80歳代の女性。転倒時に破損したガラス片が左後頸部に刺さり受傷し,出血性ショックで当院に救急搬送された。ガラス片はすでに家族が抜去していた。来院時,Zone Ⅲの頸部刺創から活動性出血を認め,椎骨動脈,あるいは外頸動脈分枝の損傷が疑われた。輸液に反応せず,用手圧迫止血でもショックでありCT撮影は断念し,直視下止血術も困難と判断し血管内治療を計画した。血管造影検査で左椎骨動脈V3領域に造影剤血管外漏出を認め,左椎骨動脈母血管塞栓術を施行した。塞栓後,再出血や虚血性合併症は認めず受傷10日目に自宅退院した。椎骨動脈は椎体深部を走行するため鋭的損傷はまれで,その多くは椎骨動脈V2領域に生じるが,本症例は椎骨動脈V3領域に生じた鋭的損傷のため直視下での止血は困難と考えられた。そのため,血管造影で損傷血管の同定ができ,脳血流の観点から塞栓術が可能であれば血管内治療による根治的止血術を行うことも可能である。

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編集後記
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