2025 年 28 巻 3 号 p. 499-509
背景:救急自動車に搭乗する救急救命士の運用について,救急活動の安全性,迅速性から複数名搭乗の必要性に関する検討はほとんどない。目的:救急救命士の救急車複数名搭乗の必要性および実現性の検討を目的とする。特定行為等実施件数,救急救命処置時間,救急隊当りの運用救命士数を,各々指標として検討する。方法:目的に記載の各指標の分析とともに,国内外の文献を参照し考察する。結果:2003(平成15)~2022(令和4)年の特定行為等実施件数は,約7万件から約47万件へ6.7倍に,とくに2014(平成26)年から急激に増加した。救急救命処置時間は感染症流行前までは一定であったが流行時から急激に増加した。救急隊救命士数の全国平均は着実に増加し2026(令和8)年度には2.0人を超える状況であるが,都道府県間には少なからず格差がある。結論:救急救命処置の安全性・迅速性から,救急救命士の複数名搭乗の必要性を認めたが,各都道府県の特性に応じた体制整備のいっそうの取り組みが必要である。