日本臨床救急医学会雑誌
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臨床経験
妊婦の交通事故
―腹部外傷が妊娠経過と胎児に及ぼす影響―
三宅 徹郎西中 徳治加藤 博之瀧 健治
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2000 年 3 巻 5 号 p. 488-491

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抄録

妊婦の交通事故における腹部打撲が与える影響と,その流・早産の予防策について検討した。乗車中の交通事故で腹部打撲を負った妊婦10例を対象とし,受傷時の状況と受傷時以降の観察内容をretrospectivcに調査した。シートベルト非装着の6例は,来院時の内診と児心音の所見や母体の重症度から,子宮の緊張亢進による胎盤早期剥離の危険性を考慮して緊急入院となった。入院中はCTGモニターで胎児心拍と子宮収縮状態を観察し,胎児の予後は良好であった。一方,シートベルト装着の4例はすべて入院を必要としなかった。シートベルト装着4例はいずれの症例も,何ら打撲の痕跡が認められないほど軽度と思われる腹部打撲であったが,シートベルト非装着の妊婦では子宮や胎児への影響が認められており,その対策は妊娠継続に重要であった。妊婦の交通事故において腹部打撲がたとえ軽微であっても,受傷後の経過観察およびその流・早産の予防対策が重要であることが示唆された。

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