2000 年 3 巻 5 号 p. 492-498
高齢者(80歳以上)緊急手術の現状を調査し,看護の役割を考察した。対象は平成5年〜平成10年の5年間に入院した680例中緊急・待期手術例179例。方法は来院者名簿・看護記録・カルテ・手術記録から検索した。結果高齢者が緊急手術に至る疾患は限局しており,重症度は高いものの,経過は良好であった。来院から手術室入室までの時間は短く,術後はせん妄が多発していた。初療室での経過中,患者は苦痛と強いストレス下にあり,適切な情報収集と看護介入のあり方が重要になっていた。術後は看護者の術後せん妄に対する戸惑いがみられた。高齢者の緊急手術における看護者の役割は初療場面と術後管理において重要である。前者ではADLに関する適切な情報収集と患者の意思決定を尊重する環境作り,後者では術後せん妄に対する適切な看護診断とアプローチである。進行する高齢化社会に向け,加齢に伴う特徴を踏まえた包括的な看護の構築を求められている。