2000 年 3 巻 5 号 p. 499-504
症例は67歳男性。既往歴は平成■年,心筋梗塞で冠動脈バイパス術を施行。平成■年■月■日,心不全で当院循環器科入院となった。■月■日,腹痛を訴え3日後,■月■日腹部レントゲン写真で腹腔内遊離ガス像認め当科紹介となった。上部消化管造影で十二指腸潰瘍穿孔性腹膜炎と診断したが,患者の心機能および冠動脈バイパス術時,右胃大網動脈を用いていることなどを考慮し,経皮的ドレナージを施行して保存的治療を行った。状態は一時落ち着いたが■月■日より全身悪化し,人工呼吸管理となった。また喀痰,ドレーン挿入部よりMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が検出され,その治療にも難渋した。結局,全身状態が改善して経口摂取を開始したのは■月中旬であり,内科転科後第120病日目に軽快退院した。冠動脈バイパス術の普及に伴い同様の症例も増加するものと思われ,緊急時いかに患者の状態を適切に評価し,治療方針を選択するかが重要であると考えられた。