日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
徐脈と高血圧を呈した樟脳中毒の2例
湯本 正人森田 正人大久保 一浩棚橋 順治中村 不二雄勝屋 弘忠
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キーワード: 樟脳中毒, 徐脈, 高血圧
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2000 年 3 巻 5 号 p. 505-508

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抄録

樟脳中毒により,徐脈と高血圧を呈した2症例を経験したので報告する。症例1は16歳男性。樟脳含有のジュースをコップに一杯飲んだ。20〜30分後に救急外来受診時,40bpm前後の徐脈と収縮期血圧200mmHgを超える高血圧を認めた。胃洗浄施行中に突然痙攣が起こり,意識レベルがJCS Ⅲ-200に低下したため,ICUに収容した。原因薬物が不明で,意識レベルが不良のため血液吸着および血液透析を施行した。その後,意識は順調に回復したが,徐脈と高血圧は3日間持続した。症例2は15歳男性。症例1と同じジュースを一口飲んだ。救急外来受診時,症例1と同様の徐脈と高血圧を認め,16時間持続した。樟脳は一般に『カンフル剤』として知られているが,その循環器系に及ぼす薬理作用は文献にも詳述されていない。今回の症例の場合,非常に強い血管収縮作用と反射性徐脈,ないし心臓に対する抑制作用などが絡み合い,このような徐脈と高血圧を来したものではないかと推定した。

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© 2000 日本臨床救急医学会
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