2000 年 3 巻 5 号 p. 509-514
十二指腸壁内血腫は,交通事故などの腹部鈍的外傷に起因する比較的まれな疾患であるが,報告数は年々増加している。治療法としては,近年では保存的治療が選択されることが多く,施設により超音波ガイド下血腫ドレナージ,内視鏡下ブジーなど,さまざまな非観血的治療が施行されている。今回われわれは,20歳男性の外傷性十二指腸壁内血腫を経験し,保存的治療にて14日間経過観察したが,血腫の縮小傾向が認められず,通過障害の改善を得られなかったため,内視鏡的に血腫ドレナージを行った。術後13日目より経口摂取可能となり,術後16日目には腹部CT上血腫の消失を認め,とくに合併症を認めず治癒せしめた。内視鏡による血腫ドレナージは十二指腸潰瘍の形成および穿孔の危険性などがあるものの,患者の負担が少なく有効な方法であると思われたので,若干の文献的考察を加えてこれを報告する。