2003 年 6 巻 5 号 p. 483-486
頸髄損傷(以下,頸損と略す)患者には体温調節障害が合併するが,乗用車を運転中に熱中症を発症した例は報告がない。われわれは運転中に発症した熱中症を経験し,興味ある知見を得たので今後の警鐘として報告する。症例:24歳,男性。17歳時に事故で頸髄を損傷したが,現在は車いすで自立した生活を送っていた。平成13年6月,黒い車を運転中に意識を失い,軽い接触事故を起こした。救急隊現着時JCS 300,体温42℃以上で熱中症を疑い当科に搬入された。来院時,痙攣はなく,四肢は除皮質硬直様であった。全身冷却を開始し,気管挿管下にバルビツレート療法を施行したところ,体温は順調に低下し4病日に意識回復,新たな後遺障害はなく10病日に退院した。 考察:頸損患者では意識下の運転中であっても熱中症を発症する可能性があり,乗用車の車内温度の上昇を防ぐ諸対策や,運行上の注意を指導する必要がある。