2004 年 7 巻 3 号 p. 261-264
症例は59歳,男性。膵頭部癌の手術目的にて当科を紹介された。術前に中心静脈栄養カテーテルを留置し,手術を施行したが,術後2日目より呼吸困難が出現し,呼吸不全に陥った。両側胸水貯留を認めたため胸腔ドレナージを施行し経過をみていたが,排液が持続的かつ多量だったため胸部X線検査およびカテーテル内の血液の逆流を確認したところ,カテーテル先端が上大静脈に突き当たっており,血液の逆流はなかった。このため輸液内容による水胸である可能性を考え内頸静脈からのルートに変更したところ,徐々に胸水の排液量が減少し呼吸状態は改善した。本症例をふまえ,挿入操作に問題がなくとも,中心静脈内留置カテーテルの先端の位置には十分な注意が必要であると考えられた。