日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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7 巻, 3 号
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原著
  • 工藤 俊, 森野 一真, 田中 眞司, 渋間 久, 武田 憲夫, 斎藤 幹郎
    原稿種別: 原著
    2004 年 7 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    当センターに搬送の院外心肺停止患者で全身のCT検査を施行した65例を対象に,病院前の気道確保法別に,CT上の血管内異所性ガスについて検討した。その結果,ガス発生は救急救命士施行の食道閉鎖式チューブ(以下WB)12/25例(48%),ラリングアルマスク(以下LM)4/9例(44%),バッグバルブマスク2/25例(8%),医師挿管による気管チューブ0/6例(0%)であり,明らかにWBやLMで高頻度に認められた。体内分布は主に肝静脈,下大静脈,右心系などの静脈系血管であり,なかには脳血管にも認められた。ほかに縦隔,頸部皮下など血管外にもわずかに認めるものもあった。原因は不明であるが,窒息や溺水などでの気道閉塞状態が多かったことから,WBやLMの器具を用いた気道確保下での過剰な陽圧換気法が影響している可能性が示唆された。

  • ―救急救命士へのアンケート調査と消化管内ガス分布からの検討―
    山本 俊郎, 鈴木 範行, 鈴木 淳一, 岩下 真之, 福山 宏, 藤田 誠―郎, 田原 良雄, 杉山 貢
    原稿種別: 原著
    2004 年 7 巻 3 号 p. 234-239
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    救急救命士が指導医の指示の下にCPA症例に対して特定行為を行えるようになり,とりわけ気道確保はCPA症例のほぼ全例に行われているが,その実態を検証した報告は少ない。そこで,救命士へのアンケート調査,搬入時の医師による換気状態の評価と腹部単純レントゲン写真の消化管内のガス量から,50例のCPA症例の気道確保と換気状況を前向きに検討した。用手的気道確保は6例,EGTAは6例,LMは38例であった。EGTAかLM使用例で記載のあった38例では全例が1回で挿入できたことより,挿入手技に問題はないものと思われた。換気状況の修正評価では36/43(83.7%)が良と評価され,修正評価と医師評価は19/24(79.2%)で一致した。消化管内ガス量からは,上部小腸型が最も確実な換気状態を反映し,全小腸型では一部の換気不良例が,胃内限局型では理想的に換気がなされたか,全く換気ができていなかった症例に三分される可能性が示唆された。

  • ―キャリア志向に焦点をあてて―
    坂口 桃子, 花井 恵子, 三浦 睦子, 山勢 善江, 吉田 寿子, 小倉 ひとみ, 作田 裕美
    原稿種別: 原著
    2004 年 7 巻 3 号 p. 240-247
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    救急看護職のキャリア開発システムの構築にあたり,全国600名の看護職を対象にキャリア形成に関する調査を行った。入手した448サンプルの有効回答をもとに,救急看護職のキャリア志向の特徴について実証的に検討した。救急看護職に特徴的なキャリア志向として,「専門的・職能的能力」と「自律性」が抽出された。さらに,キャリア志向と職務特性の適合認知が低いと「安定性」志向に向かう傾向がみられ,救急看護職のキャリア発達にとって職務への適合認知が重要であることが示唆された。また,救急看護職のキャリア志向と職務特性の適合認知に影響を及ぼす上司の役割行動は,比較的低い傾向にあることが認められ,救急看護職の場合,上司よりも他の対人関係による相互作用の影響を受けているものと考えられた。

症例・事例報告
  • 安部 隆三, 平澤 博之, 織田 成人, 志賀 英敏, 松田 兼―, 上野 博一, 仲村 将高, 中西 加寿也, 貞広 智仁, 北村 伸哉
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 248-254
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    神経学的後遺症なく救命し得た院外心肺停止症例を3例経験した。症例1は,28歳,男性。突然死の家族歴があるがCPAの原因は不明であった。心拍再開後,脳低温療法を,覚醒後,高圧酸素療法を施行,発症から198日後,職場復帰した。症例2は,56歳,男性。急性心筋梗塞の診断のもと,intra-aortic baloon pumping(IABP)を含む循環管理を行い,後遺症なく退院し得た。症例3は,44歳,男性。偶然居合わせた救急救命士によるbystander CPRを受けたVF症例で,脳低温療法後,全覚醒,原因を精査中である。当科における心肺停止症例の検討からも, これまでに報告された論文のmeta-analysisにおいても,心原性で, 日撃者がおり,bystander CPRが施行され,VFである場合は,生存退院の可能性が高いことが再確認された。心拍再開後の治療に関しては,脳低温療法をはじめ有効な可能性のある治療法が存在するが,今後さらなる検討が必要であると考えられた。

  • 高須 修, 坂本 照夫, 福光 賞真, 黒木 美菜, 藤本 優, 谷川 健, 竹本 由美, 鹿毛 政義, 神代 正道
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    急性喉頭蓋炎による上気道閉塞が死因となった2成人剖検例を経験した。症例1は55歳,男性。咽頭痛出現から4時間後,呼吸困難が増強し心肺停止。喉頭蓋舌側に膿瘍形成を伴う高度な炎症を認めた。症例2は54歳,女性。咽頭痛出現から11時間後,呼吸困難が出現し心肺停止。披裂喉頭蓋ひだに高度な炎症を認めた。気道閉塞機序として,前者は腫脹した喉頭蓋による気管喉頭口上方からの閉塞が,後者は披裂部・披裂喉頭蓋ひだの求心性腫脹による気管喉頭口の閉塞が推察された。本症は咽喉頭痛を初発症状とし,そのうち約10%に急速な気道狭窄症状が出現する。Preventable deathをなくすためには,気道閉塞機序を含め本症を熟知し,初期症状から疑うこと,喉頭蓋とともに披裂・披裂喉頭蓋ひだの腫脹を評価すること,呼吸状態を厳重に観察し外科的手法を含めた気道確保の時期を逸しないことが重要と考えられた。

  • 呉 成浩, 金子 哲也, 廣田 政志, 森 俊明, 中尾 昭公
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 261-264
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    症例は59歳,男性。膵頭部癌の手術目的にて当科を紹介された。術前に中心静脈栄養カテーテルを留置し,手術を施行したが,術後2日目より呼吸困難が出現し,呼吸不全に陥った。両側胸水貯留を認めたため胸腔ドレナージを施行し経過をみていたが,排液が持続的かつ多量だったため胸部X線検査およびカテーテル内の血液の逆流を確認したところ,カテーテル先端が上大静脈に突き当たっており,血液の逆流はなかった。このため輸液内容による水胸である可能性を考え内頸静脈からのルートに変更したところ,徐々に胸水の排液量が減少し呼吸状態は改善した。本症例をふまえ,挿入操作に問題がなくとも,中心静脈内留置カテーテルの先端の位置には十分な注意が必要であると考えられた。

  • 山内 浩揮, 湯本 正人, 棚橋 順治, 三浦 政直, 中村 不二雄, 勝屋 弘忠
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 265-270
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    クサノンA®️は混合乳剤除草剤で,さまざまな毒性物質を含んでいる。今回クサノンA®️中毒により意識障害,代謝性アシドーシス,メトヘモグロビン(以下Met-Hb)血症,遅発性溶血性貧血などの多彩な病態を呈した2症例を経験したので報告する。本中毒では初期,2~4日後,1週間後と異なる時期に異なる病態に対処しなければならない。そのためにはMet-Hb血症,メチレンブルーだけにとらわれず多彩な病態を理解する必要がある。

  • 原口 愛, 高橋 功, 森下 由香, 南崎 哲史, 早川 達也
    原稿種別: 症例報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 271-273
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    自殺目的でナツメグを摂取した症例を経験したので報告する。症例は22歳の男性で,約20gのナツメグを摂取した。嘔吐,ふらつき,口渇感などの症状が出現し,不安となり救急車で当院に搬送された。来院時はやや不穏状態であったが,バイタルサインは血圧上昇と頻脈以外,特に問題はなかった。補液および活性炭の投与を行い,約11時間の経過で症状は消失し帰宅した。ナツメグは一般食品で,容易に手に入れることが可能であり,死亡例など重篤な経過をとる症例も報告されていることから,中毒物質として注意する必要があると思われる。

調査・報告
  • ー平成14年度近畿府県合同防災訓練参加者へのアンケート調査結果よりー
    上山 裕二, 鎌村 好孝, 鳥海 進一, 井内 貴彦, 安田 理, 三村 誠二, 橋本 拓也, 渡部 豪, 黒上 和義
    原稿種別: 調査・報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 274-279
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    平成14年11月徳島県主催で近畿府県合同防災訓練が行われた。合同防災訓練における医療の関わりを検討することを目的として,訓練に参加した医師・看護師・事務職員44名(救護者群),看護学生200名(傷病者群)にアンケート調査を行った。災害医療への興味があるものの訓練に不満をもったと答えた者が救護者群の23.8%,傷病者群の45.9%にあり,多くがより充実した内容の訓練を期待していることが明らかとなった。従来の広域防災訓練では,医療関連の訓練が全体に占める割合が少なく,傷病者の流れの中に医療部門が関わる訓練は限られていた。今後多様化する災害において医療活動が求められる場面は多い。医療の役割を浮彫にする広域防災訓練の実施に向け,①救出・救助の段階から医療チームを投入するシナリオでの訓練,②災害医療や訓練に関する事前勉強会の開催,③災害拠点病院など公的病院スタッフの訓練参加,などの工夫が必要である。

  • 山崎 敏行, 入江 幸史, 吉川 孝次, 尾形 昌克, 篠原 隆史, 越智 元郎, 谷川 攻一
    原稿種別: 調査・報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 280-284
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    中国四国地方の全消防本部に質問状を送付し,管轄地域における市民CPRの実施状況について調べた。対象は2001年1月から12月に中国四国地方の救急隊が搬送した心肺停止患者で,発症時の目撃者の有無ごとに,救急隊員の現場到着時に市民による心肺蘇生法が実施されていた患者の割合を調べた。その結果,中国四国地方の117消防本部のうち111本部から回答を得た。これらの本部が2001年に搬送した心肺停止例は合計7,812例(目撃例2,237例,目撃なし5,575例)で,市民によるCPRの中国四国地方平均実施率は28.5%であった。このうち,目撃例での実施率は42.5%,目撃なしでは22.8%であった。発症が目撃された例であっても,半数以上の病院外心肺停止患者が市民による心肺蘇生の処置を受けないまま救急隊員に引き継がれている現状であり,心肺蘇生法普及のためいっそうの努力が必要と考えられた。

  • 一血圧上昇を目的とした使用について一
    安田 康晴, 石原 諭
    原稿種別: 調査・報告
    2004 年 7 巻 3 号 p. 285-287
    発行日: 2004/06/30
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    ショックパンツは1970年代外傷出血患者に多く使用され,日本においても平成3年救急隊員の行う応急処置等の基準の改正に伴い救急資器材の拡大9項目に取り入れられた。今回アナフィラキシーショック患者への使用例について後ろ向きに検討した結果,ショックパンツ装着前収縮期平均血圧は64mmHgで装着後収縮期平均血圧は102mmHgであり,またショックパンツ未装着症例との比較においてもショックパンツ装着によって血圧は有意に上昇していた(p<0.05)。欧米のようにアナフィラキシーショックに対してプレホスピタルから輸液や投薬が行えない日本の救急現場においては,ショックパンツの装着は血圧上昇目的に有効であることが示唆された。

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