2004 年 7 巻 4 号 p. 339-343
喘息発作に起因する呼気障害出現時に,呼気を補助することで次の吸気を可能にし,窒息による低酸素血症を予防,あるいは改善することを目的とする呼吸介助法に,胸郭外胸部圧迫法がある。今回,喘息発作により心肺停止状態に陥った傷病者に胸郭外胸部圧迫法を施し,社会復帰した症例を経験した。本症例では,心肺蘇生法を開始したものの,バッグバルブマスクによる換気抵抗が強く陽圧換気不能であったことから,呼気を促す目的で胸郭外胸部圧迫法を施したところ,明らかに換気抵抗の軽減が感じられ,数回の胸郭圧迫とバッグバルブマスク換気の併用のみで心拍再開が認められた。喘息発作で起こる心停止は,低酸素血症による心筋虚血が主な原因であるが,気道の狭窄により呼気が障害されることで胸腔内圧が著明に上昇し,心臓と大静脈が過膨張した肺に圧迫され,静脈還流が減少し心拍出量が低下する閉塞性ショックも原因の一つになりえると考えられた。