日本臨床救急医学会雑誌
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原著
自殺既遂355例の臨床的検討
山本 俊郎鈴木 範行鈴木 淳一藤田 誠―郎杉山 貢
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2006 年 9 巻 3 号 p. 243-251

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抄録

横浜市立大学高度救命救急センターにおいて13年間(1990.1.1~2002.12.31)に治療した自殺既遂355症例について,後向きに検討した。既遂症例数は年々増加していたが,未遂症例の増加により,その割合は低下していた。自殺手段では,墜落203症例57.2%,縊頚85症例23.9%と墜落が過半数を占め,全国総計結果と異なった。精神科疾患の既往は104症例29.3%に認められ,気分障害(F3),統合失調症,統合失調症型および妄想障害(F2)がそれぞれ50例48.1%,40例38.5%を占めていた。治療歴は196例55.2%に聴取でき,通院中,入院中と中断はそれぞれ88例,10例,12例であった。企図歴は144例40.6%に聴取でき,32例22.2%に既往を認めた。最終企図時期が明確な26例では,今回の企図まで3ケ月以内12例をはじめ1年以内の企図は18例69.2%と高率であった。精神科疾患別にみると,中高齢者の多いF3は縊頚の70%を占めていた。社会的環境や精神科疾患により,自殺企図の手段に特徴が見られることより,状況に即した自殺予防対策が必要と思われた。

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© 2006 日本臨床救急医学会
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