日本教育工学会研究報告集
Online ISSN : 2436-3286
レゴタスクにおける概念的・統語的プライミングの役割
田中 幹大
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2023 年 2023 巻 2 号 p. 241-246

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抄録

反復(repetition)とは実験心理学において中心的な役割を果たす現象であり,様々な行動や学習を反映したものでもある.これはプライミングとも言われており,言語科学の研究においてもこの現象が様々な分野で発見され,ここでは大きく分けて2つのプライミングに注目する.1つ目は言語を理解し産出する際に発話者が以前使用した統語構造を繰り返す傾向にある,統語的プライミング効果(Structural priming)である(e.g., Pickering & Ferreira, 2008).2つ目は,統語構造に反映されていない概念や意味が反復されて影響を与える,概念的(意味的)プライミング(Conceptual or semantic priming)と呼ばれる(e.g., Garrod & Anderson, 1987).これらのプライミング現象を用いて,過去には人の発話モデルや対話モデルの構築が議論されてきた(e.g., Pickering & Garrod, 2004).本研究では言語産出や対話のモデルをさらに検証するために,Tanimura(2016)の2名の被験者がLego を指定された形にするLego taskの結果を使用し,対話の会話の中で起きるプライミング効果を分析することで,そのプライミング効果が概念レベル,もしくは統語的レベルで起きていることなのかを検討する.その結果,プライミングがLego taskの対話の中でどのような役割を果たしているのかを明らかにし,最終的に産出や対話のモデルの構築にどのように貢献できるのかを議論する.Bock, J. K. 1986. Syntactic Persistence in Language Production. Cognitive Psychology, 18, 355-387.Garrod, S., Anderson, A. (1987). Saying what you mean in dialogue: A study in conceptual and semantic coordination. Cognition, 27, 181–218.Pickering, M.J., Ferreira, V.S. 2008. Structural priming: A Critical Review. Psychological Bulletin, 134. 427-459Tanimura, M. 2016. Kadai tassei taiwa ni okeru eigogakushusha no grounding to gesture no doki, Paper presented at the 19th conference of Japanese pragmatics, Shimonoseki City University, Yamaguchi.Tanaka, M. (2023). How Do We Produce a Metonymic Expression? Evidence from Priming in Japanese. Unpublished Manuscript.

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© 2023 日本教育工学会
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