抄録
雪室貯蔵は雪を冷却源として食品の保存に用いる貯蔵方法であり,豪雪地域を中心に古くから行われてきた.近年では二酸化炭素を排出しない冷却方法として見直されつつあり,またその優れた品質保持効果と食味向上効果が注目されている.本研究では,製粉直後の小麦粉(強力粉と全粒粉)を夏季の3ヶ月間常温,冷蔵室,雪室に貯蔵した場合の品質の状態と製パン性を比較検討した.その結果,常温貯蔵に比べて冷蔵室貯蔵と雪室貯蔵でデンプンの分解,遊離脂肪酸の生成,脂質の過酸化が抑えられており,グルテン形成能と製パン性が向上していた。強力粉と全粒粉で作成した食パンの食味については,常温貯蔵の小麦粉で作成した食パンに比べ,雪室貯蔵のパンが有意に好まれていた。 これらの結果から,低温・低湿度で保存することが推奨されていた小麦の貯蔵においても,雪室貯蔵が有効である可能性が示された。