日本食品工学会誌
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原著論文
オリーブ油を連続相とするマイクロチャネル乳化における油中水滴エマルションの作製特性
伊藤 美希上原 緑泉井 亮太塩田 誠黒岩 崇
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2017 年 18 巻 2 号 p. 103-111

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抄録

エマルションとは,水と油のような互いに混ざり合わない2つの液体の一方が他方の液体中に準安定的に分散している状態を指し,食品,化粧品,塗料など幅広い分野で利用されている.油を連続相とした乳化によって得られる油中水滴型(W/O)エマルションからなる乳化食品としてはバターやマーガリンに代表されるように広く利用されているものの,水を連続相とする水中油滴型(O/W)エマルションに比べ詳細な研究データに乏しく,W/Oエマルションの製造工程における乳化挙動や製品品質に影響する乳化特性については不明な点が多い.

本研究では,オリーブ油を連続相としたマイクロチャネル(MC)乳化によるW/Oエマルションに作製に対する影響因子について,乳化挙動の直接観察に基づき実験的に検討した.種々の乳化剤を用いて乳化剤実験を行った結果,ポリグリセリン縮合リシノレートを用いた場合に均一性の高い液滴を作製できた.オリーブ油および種々の溶媒を連続相とした乳化実験から,連続相の粘度が高いほど液滴径が大きくなり,粘度の上昇に伴い1つの液滴形成に要する時間(液滴離脱時間)が長くなることを明らかにした.さらに,界面張力の時間変化に関する検討の結果,乳化剤が界面に吸着する過程は液滴形成過程に比べてはるかに長い時間を要するプロセスであることを示し,合わせて乳化剤濃度が液滴形成に及ぼす影響についても考察した.また,形状の異なる3種類のMC基板を用いてMC乳化を行ったところ,平均液滴径が約24 µmから90 µmにわたる均一な液滴を生成することができた.続いて,実際の乳化食品を模擬した検討として,分散相に乳由来成分を添加しMC乳化を行い,脱脂粉乳やホエイパウダーなどの添加により液滴形成挙動が変化することを示した.

これまでに,W/O乳化物における液滴形成過程を詳細に検討した例は少なく,とくに食品グレードの材料を用いた研究は情報が不足していた.本研究は,オリーブ油を連続相とするW/O界面の挙動についてMC乳化を通じて詳しく検討することで,食用W/Oエマルションの形成に及ぼす諸因子の影響について報告したものである.示された検討結果は実際の食品製造現場における様々な経験的制御因子を理解する上で有用な情報を提供すると期待される.

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© 2017 一般社団法人 日本食品工学会
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