2023 年 24 巻 4 号 p. 113-117
食品や医薬品製造では目的物質として高濃度のタンパク質溶液を正確にかつ連続的に測定することが望まれている.このような手法はPAT(プロセスアナリティカルテクノロジー)とよばれ,連続製造をはじめとするプロセスの高度化に必要である.旋光度(OR)は,タンパク質濃度測定としては一般的な方法ではないが,高濃度まで測定が可能であり,可視光に吸収がある物質による妨害が少ないことをすでに報告している.
本論文では,この方法を連続測定に適用するため通常のセルを流通型に改造し,タンパク質濃度とORの直線性について,前報の値と比較し確認した.次に,セルの滞留時間分布を測定し,連続測定における測定可能範囲について検討した.セル容積が大きいので,急激な時間変化についての測定は難しいが,比較的緩慢な時間変化については問題なく測定できることが明らかとなった.また,セル容量が大きいことと接続チューブも太いので高流量・高粘性溶液の測定に適していると考えられた.
実証のため抗体タンパク質の限外ろ過膜による濃縮工程に適用した.循環液を希釈して280 nmにおける紫外吸収で測定した値と,流通型ORセルによる連続測定値はよく一致した.