魚病研究
Online ISSN : 1881-7335
Print ISSN : 0388-788X
ISSN-L : 0388-788X
三陸沿岸における養殖ホタテガイの大量斃死に関する研究―I
貧栄養,貧栄養+振動の両実験条件下で発生する斃死について
森 勝義菅原 義雄小畑 一臣
著者情報
ジャーナル フリー

1974 年 9 巻 1 号 p. 10-18

詳細
抄録

 本実験は,最近,三陸沿岸の各地で発生している垂下養殖ホタテガイ(主として稚貝)の大量斃死の原因を究明する生理学的方法を探るために,これらの異常貝に共通して観察される貝殻異状および軟体部萎縮などの病的変化とそれに伴う斃死を実験的に発現させようとしたものである。種々検討の結果,晩春から初夏の満1年貝に対する貧栄養,貧栄養+振動の両実験条件(特に後者)がこれらの発現に有効であることがわかった。また,本実験結果は次の2点を示唆している。 1) 三陸沿岸への搬入時から晩春までの間に稚貝の生理的活性を大きく低下させる素因が形成される。 2) 消化盲嚢部および閉殻筋の組織学的所見から,その死は来たるべき高水温環境への適応能力獲得過程における代謝機能障害と関連する。これらの実証が今後の斃死原因究明に際しての重要課題と考えられる。

著者関連情報
© 日本魚病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top