2022 年 57 巻 2 号 p. 45-55
水稲-小麦-大豆の2年3作で輪作される水田転換畑において大豆の収量向上を目的として,生産者が管理する30ほ場の大豆の収量と生育に関連する草型,収量構成要素,被害粒,およびほ場に関連する排水性,土壌物理性,土壌化学性との関係を調査・解析した.まず,生育に関連する項目との関係を解析した結果,株数が十分確保された条件下では,分枝数,一株総莢数,一莢内粒数が多く,百粒重が重いほ場において増収する傾向があった.また,収量とカメムシ類による被害粒率(吸汁害粒率)との間には有意な負の相関関係が認められることから,一株総莢数を収量につなげるためには,カメムシ類の適期防除が必要であると考えられた.次にほ場に関連する項目との関係を解析した結果,収量は地下水位,作土層の滞水時間,作土下層の飽和透水係数と有意な相関関係が認められた.このことから,ほ場に関連する低収要因を改善し,収量を向上させるためには,①地下水位が地表面から40 cm以内に上昇する日数を減少させること,②まとまった降雨時に作土層が滞水する時間を減少させること,③作土下層の土壌物理性を改善し,透水性を高めることが必要であると考えられた.また,地下水位が地表面から40 cm以内に上昇する日数と作土層の滞水時間の間にも正の相関関係が認められることから,地下水位を低下させることにより,降雨時に作土層が滞水する時間を短縮できる可能性があるものと考えられた.