老年歯科医学
Online ISSN : 1884-7323
Print ISSN : 0914-3866
ISSN-L : 0914-3866
原著
総義歯のチェアサイドにおける簡便な維持力測定方法の開発と再現性の検討
青柳 佳奈佐藤 裕二北川 昇岡根 百江角田 拓哉高山 真理
著者情報
ジャーナル フリー

2014 年 29 巻 1 号 p. 21-28

詳細
抄録

質の高い全部床義歯治療のためには,義歯の維持・安定が重要である。従来からの義歯の維持力の評価方法は,大がかりな装置が必要であり,チェアサイドでの評価が困難であった。そこで,維持力を測定できるコンパクトな装置を開発した。 本報では,天然歯列者の口蓋床に,種々の介在液を応用し,維持力を測定することで,新たに開発した維持力測定装置の再現性を明らかにすることを目的とした。 金属スパチュラにひずみゲージを付与した維持力測定装置を開発した。被験者は健常な有歯顎者 14 名とした。被験者の口蓋床を製作し,口蓋と口蓋床の間に介在液として人工唾液・リキッドタイプ・ジェルタイプの三種類の保湿剤を使用した。10 秒以上口蓋床を口腔内に圧接し,一定の速度で牽引を行った。測定は各 5 回行った。口蓋床が脱離した時の荷重量を維持力とした。 維持力は,人工唾液,リキッド,ジェルの順で増加し,維持力は 0.9〜17.7 N までの値を示した。個人内の介在液別の測定値のSDは比較的小さくばらつきは少なかった。 三元分散分析で被験者間,被験者と介在液を比較したところ,有意な差が認められた(p<0.05)。繰り返しは,有意な差は認められなかった(p=0.346)。 大小さまざまな維持力が測定可能であることが示された。開発した維持力測定装置の口腔内での再現性は良好で,チェアサイドで使用可能であることが示唆された。

著者関連情報
© 2014 一般社団法人 日本老年歯科医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top