老年歯科医学
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原著
特別養護老人ホームにおけるオーラルケアマネジメントの 口腔環境の改善と肺炎発症率抑制に関する研究
武井 典子石川 正夫石井 孝典高田 康二堀 信介浅井 啓太魚住 龍史別所 和久
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2015 年 30 巻 3 号 p. 308-317

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抄録

施設職員のオーラルケアに対する問題解決力を高め,日常の場で主体的にオーラルケアを実践できるようなマネジメント法を試作して,その効果を口腔環境の変化と肺炎発症率から検討した。対象者は京都府京丹後市にある某特別養護老人ホーム入所者(定員 58 名)である。2010 年から 2013 年の 3 年間で半年ごとに 7 回の検査を行った。 オーラルケアマネジメントは口腔清掃と摂食嚥下機能訓練の支援に分けて設定した。口腔清掃の支援は,唾液湿潤度およびカンジダ数の検査結果から肺炎のハイリスク者をスクリーニング後に,Takei らが開発した口腔清掃分類表を活用し,個々の状況に応じたオーラルケア法を職員に提案した。また,摂食嚥下機能訓練の支援は,フードテストの結果から機能訓練が必要な対象者をスクリーニングして,昼食時の直接訓練に加え必要に応じて間接訓練を提案した。最初の 1 年間は 1〜2 カ月に 1 回のオーラルケアマネジメントを行い,その後 2 年間は半年ごとに検査結果の提供を行った。肺炎などによる入院状況は,全入所者が利用する近隣病院からカルテを基に入手した。今回の調査では,すべての入所者に対して日常のオーラルケアの向上を目指してオーラルケアマネジメントを行ったことから,3 年間で継時的に入所者が入れ替わっていく変化の要素を含め,入所者の口腔環境および肺炎発症率の変化を解析評価した。その結果,カンジダ数ならびにアンモニア濃度の減少,嚥下機能の改善が認められたが,肺炎による入院回数 1 回以上の入所者の割合は,有意に減少しなかった。今後,さらに肺炎発症率抑制に有効なオーラルケアマネジメント法について検討・改善を行う予定である。

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© 2015 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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