老年歯科医学
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調査報告
下顎腫瘍術後高齢患者に装着した下顎顎義歯の安定因子に関するパイロット・スタディ
尾崎 公哉岡田 和隆馬場 陽久近藤 美弥子松下 貴惠渡邊 裕山崎 裕
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2021 年 36 巻 1 号 p. 65-71

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抄録

 目的:下顎腫瘍術後の口腔機能低下を補綴的に回復するためには,顎欠損や再建法,現在歯の状況など,多くの因子がその成否に関与するとされている。しかし,これまで下顎顎義歯の安定に影響を及ぼす因子について詳細な検討はなされていない。そこで本研究では,下顎腫瘍術後高齢患者に下顎顎義歯を装着した症例において,義歯の安定に関する因子を検討した。

 対象:2014年から2018年に北海道大学病院高齢者歯科にて下顎顎義歯を装着した65歳以上の下顎腫瘍術後患者で,装着後の経過を観察しえた10名。

 方法:顎義歯の安定をKapurの義歯の動揺の程度による評価法で判定した。Score 2を「良好」,Score 0および1を「不良」とし,良好群(7名)と不良群(3名)の2群に分けて義歯の安定に関係する因子を比較検討した。

 結果:下顎顎義歯の安定の良否について,いずれの因子においても2群間で有意差は認められなかったが,効果量では顎義歯の種類,デンチャースペース,皮弁の可動性・被圧縮性で顕著に大きく,支台歯数,下顎現在歯数,下顎顎義歯装着時の年齢,性別にも一定の効果が認められた。

 結論:下顎腫瘍術後に装着された顎義歯の安定は,顎義歯の種類やデンチャースペース,皮弁の可動性・非圧縮性に大きな影響を受けることが示唆された。本研究は症例数が少ないため,今後,症例数を増やしてさらなる検討が必要と考えられた。

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© 2021 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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