抄録
本研究の目的は, 1) 長崎市内における過去4年間の訪問歯科診療希望要介護者に関するデータベースを構築し, これらの患者の特性を明らかにすること2) このデータベースを活用した高次歯科医療機関への紹介判定システムを開発し, その妥当性を評価すること3) 訪問歯科診療を実施している歯科医師の現状を把握することであった。
対象は平成11年4月~ 平成15年2月までの間の訪問歯科診療を希望した要介護者2, 218名であった。対象者の医療情報をコンピューターに入力してデータベース化した。このデータベースを利用し, 患者特性に沿った対応先を自動的に一次判定し, 二次判定に必要な判定資料を出力できるシステムを構築した。
その結果, 訪問歯科診療を希望した要介護者の特性は, 脳血管障害後遺症が最も多く, 歯科治療に対する主訴は義歯不適合, 疼痛除去, 摂食機能障害の順で多かった。一次判定では, 訪問診療が75.7%, 診療所搬送通院診療が17.7%, 大学病院搬送通院が7.0%, 大学病院入院治療が0.6%と判定された。一次判定で大学病院入院診療, 大学病院搬送通院診療と判定されても二次判定で訪問診療となるケースが多かった。調査期間の約4年間で長崎市歯科医師会会員の約半数が訪問歯科診療を実施していた。歯科医師一人当たりの訪問歯科診療初診患者数は13.6名, 中央値3名であった。