老年歯科医学
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パルスNd: YAGレーザー照射による歯周病の治療効果
奥川 博司菊池 雅彦山口 由紀子服部 佳功渡辺 誠
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1994 年 8 巻 2 号 p. 121-127

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抄録

パルスNd: YAGレーザーによる歯周病の治療効果を明らかにする目的で, 歯周病罹患歯の歯周ポケット内に照射を行い, 照射前後の症状を比較検討した。被験歯は歯冠補綴物や歯頸部の修復物を有さず, 両隣在歯を含め連続3歯以上に最大4mm以上の歯周ポケットを有する生活歯とし, 被験者30名より各1歯を選択した。照射装置 (dLase300, American Dental Laser, Inc., USA) の接触型ハンドピースを歯周ポケットに挿入し, 隅角部に各20秒間, 頬舌側部には30秒間照射した。照射出力は毎秒20パルスにて疹痛閾値下の上限に設定した。
照射前および照射後終了1ヵ月後における臨床症状の診査結果より, 歯肉の発赤 (71%), 腫脹 (89%), 歯周ポケットからの出血 (81%) の著明な改善が認められた。歯周ポケット深度は, 照射前 (1~8mm, 平均3.1±1.2mm) と比較して, 照射後 (1~7mm, 平均2.1±1.1mm) に有意 (p<.001) に減少した。不快症状の発現は認められなかった。
以上の結果より, 本法の歯周病に対する有効性および安全性が明らかにされた。癒痛閾値下で照射を行う本法は, 除痛処置が不用あることから, 生理機能の低下した有病者や高齢者に対しても, 安全かつ有効に応用可能であるものと思われた。これらは, 所要時間の短さ, ランニングコストの低廉さと併せて, 本法の有用性を示唆するものと考えられた。

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