2023 年 41 巻 1 号 p. 27-35
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH:Syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone)は抗利尿ホルモンの分泌過剰により水の再吸収が亢進し,低ナトリウム血症を引き起こす.SIADHの原因は中枢神経系疾患,肺疾患,異所性ADH産生腫瘍,薬剤性などがある.悪性腫瘍と関連があるものはSIADHのうち27.7%と言われている1).今回,我々は化学療法中にSIADHを発症した子宮頸癌IVB期に対してバゾプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンを併用し化学療法が継続可能となり部分奏効となった一例を経験したので報告する.症例は48歳,2妊2産,不正性器出血を主訴に前医を受診し子宮頸癌の疑いで紹介受診した.子宮頸部組織診にて高異型度神経内分泌癌を伴う通常型内頸部腺癌と診断した.画像検査にて骨盤内から傍大動脈および縦隔リンパ節と肝,肺に加え第4頸椎への転移を認めた.化学療法(パクリタキセル,シスプラチン,ベバシズマブ)を開始したところ,意識障害を伴う低ナトリウム血症を認めSIADHと診断した.トルバプタン投与により低ナトリウム血症は改善し,化学療法を継続可能となり部分奏効を維持できた.子宮頸癌に対する化学療法中に発症したSIADHに対して,トルバプタンは有効であった.