2024 年 42 巻 4 号 p. 293-300
概要:骨盤内リンパ節の摘出を含む婦人科悪性腫瘍手術による術後リンパ嚢胞について当院の症例を後方視的に検討した.2012年~2021年に手術を施行した115例のうち20例(17.4%)でリンパ嚢胞を認めた.癌腫によるリンパ嚢胞の発生率は,子宮頸癌は12.8%,子宮体癌は22.9%,卵巣癌は18.9%であり,有意差は認めなかった.リンパ嚢胞あり群で,傍大動脈リンパ節摘出数は有意に増加していた.リンパ嚢胞のうち,4例(3.5%)で治療介入を必要とし,局所感染を来した2例は抗菌薬投与と嚢胞ドレナージで改善した.また,リンパ管シンチグラフィ施行後のリンパ漏改善を2例に認めた.症例1は卵巣癌IIIC期で,術後38日目にリンパ嚢胞を認めた.術後87日目にリンパ管シンチグラフィを施行し,施行後55日にリンパ嚢胞の消失を認めた.症例2は子宮体癌II期で,術後14日目,大量腹水・リンパ嚢胞とサブイレウス症状を認めた.術後35日目にリンパ管シンチグラフィ施行し,施行後23日目にリンパ嚢胞は消失し,以後,再発を認めなかった.当院での経験から,リンパ管シンチグラフィが術後リンパ嚢胞の改善に寄与する可能性が示唆された.