遺伝性腫瘍
Online ISSN : 2435-6808
症例報告
カルボプラチンで長期寛解を得た後にPARP阻害薬へ不応であったBRCA2病的バリアント陽性切除不能乳癌の1例
阿部 典恵座波 久光幸喜 絢子宇根底 幹子松本 裕文
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2022 年 21 巻 3 号 p. 85-88

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抄録

 BRCA病的バリアント陽性癌のPARP阻害薬への耐性のメカニズムとしてreversion変異が注目されている.今回われわれは,プラチナ系抗悪性腫瘍剤(カルボプラチン)で長期寛解を得た後にPARP阻害薬へ不応であったBRCA2病的バリアント陽性切除不能乳癌の1例を経験したので報告する.初診時53歳,女性,cT1cN0M0 stageⅠの左乳癌(triple negative)の診断で手術を施行した.術後4年10カ月で局所再発をきたし,その後対側腋窩に再発,のちに肺・胸壁転移をきたした.遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome;HBOC)を疑い,カルボプラチンに治療変更したところ奏効し,5年4カ月間治療を継続できた.術後11年7カ月に肝・骨転移が出現し,オラパリブのコンパニオン診断として保険適用となったBRCA検査を施行し、BRCA2病的バリアント陽性と判明した.オラパリブを開始したがほとんど効果は認めず,永眠された.

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© 2022 一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会
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