2025 年 24 巻 3 号 p. 197-200
症例は91歳,女性,閉経50歳.卵巣癌が疑われ,診断および腫瘍減量目的に両側付属器摘出術を行った.術後病理組織診断で卵管癌ⅡA期と診断した.この患者の家族歴として,乳癌(母親,姉,妹),前立腺癌(弟,甥),膵癌(弟)を認めた.また乳癌治療後の妹についてBRCA2病的バリアントが判明していたが,患者には知らされていなかった.遺伝学的検査を行ったところ妹と同じBRCA2病的バリアントを認めた.その後,遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の診断によりサーベイランスを開始となり1カ月後に早期乳癌の診断となった.遺伝性腫瘍に関する高齢者の近親者間での情報共有のあり方について考えさせられる症例であった.家族集積性が濃厚な症例においては,超高齢者であってもHBOC関連癌の発症リスクが高いと認識する必要があり,血縁者の積極的な参画を含む切れ目のない支援がよりいっそう重要であると考えられた.